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2009年2月25日 (水)

富山和彦『会社は頭から腐る』ダイヤモンド社

人間が生み出す力、集団として同じ方向を向いた組織の力は、個々人の頭のよし悪しや能力の上下などを、吹き飛ばしてしまうくらいのパワーを生み出すことを知った。

地べたを這いつくばり、お客様に頭を下げ、モノを売る。そういうことができなければ、新しい市場や新しい時代を切り開くことなどできないのだ。そもそも歴史は常にそうだった。

現実経営の背骨は収支の帳尻を合わせることと人を動かすことだと叩き込まれた。キャッシュフロー経営というと格好よく聞こえるが、営々と収支の帳尻、カネ回りの帳尻を合わせ続けることがいかに大変なことか。

組織も戦略も「そこで戦っている生身の人間の本性に従う」というのが正しいと思う。

経済構造の議論でもうひとつ重要なのが、事業の付加価値である粗利や営業利益が構造的に大きいか、小さいかを見極めることである。この指標が小さいということであれば、それは事業として、戦略的自由度も小さいということになる。

経営が教科書どおりに進まないのは、人間が介在するから。

何となくうまくいっていないと思っても、それを誰も言い出そうとしないし、検証しようとすることすら憚られる文化を持った企業は案外多い。

カネボウ化粧品の価値を生んでいるのは、ブランドや経営者ではなく、最前線で化粧品を売ってくれているビューティーカウンセラーという女性たちにあった。組織構造上いちばん重要なのだ。

そもそも人間は四〇歳を過ぎたあたりから、生産性が下がっていく。四〇代、五〇代で付加価値のある仕事ができている人は、実はかなり少ないだろう。

管理職の仕事で付加価値をつけるというのは、実は相当な能力が必要なのだ。

学歴や年功序列で半自動的に管理職になるシステムでは、管理職や経営職に就くと、ピーターの法則どおり、ほとんどの人が無能になっていくのが現実である。このことに気づいたときの答えは、三つしかない。自覚して誰よりも仕事と自己研鑽に奮闘するか、一兵卒に戻るか、それとも「老兵は静かに去る」か、である。

ダイエーは、そもそもスーパーのためだった。不動産事業をやるために、生まれた会社ではなかった。ところが、いつしか会社が大きくなっていく過程で、会社そのものを大きくすることが目的になってしまったり、会社の中で仕事がなくなってきたシニアのポストをつくるための事業を始めるようになったりしてしまった。その本来の目的と手段がひっくり返ったのだ。だから得意でもなく、取り柄でもないことを始めてしまう。別の事業をやりたいのであれば、グループの子会社でやらずに、スピンオフしてやればよかったのである。

現在はストレス社会で、昔はよかったという人がいる。しかし、硫黄島決戦に投入された士官や兵隊たちを超えるストレスが存在するだろうか。

銀行は、つまりは事業や人など見ていないのだ。

経済合理の方程式「収入マイナス支出はゼロより大なり」は、冷徹な絶対原理だ。

私たちが現場で目にしたダメになっていく会社は、結局ところ経営者、経営陣が弱っている会社でした。結果的にダメになる会社は、やはり頭が腐ってしまった会社なのです。

MBA的な「経営ごっご」の世界とは明確な一線を画したリアリズムが私の経営観の出発点になった。

ガバナンス主体は事業経営に関わる最も根本的な原理原則を理解していなければならない。まずは、事業の儲けの基本構造に対するリアルな理解と洞察である。「収入マイナス支出はゼロより大なり」という当たり前の方程式が、商売の現実論として、成立するかどうか。机上でいくら表計算ソフトを回し、100万回シミュレーションしても、商売の現実的構造を知らなければ、99%は無意味かもしれない。どんなにIQが高くても、このリアリズムの無い人間には、統治主体を担う資格はないのだ。

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