ロバート・I・サットン『あなたの職場のイヤな奴』講談社
品質管理の父と呼ばれたデミング博士は、「恐怖がその醜い頭をもたげるとき、人びとは自己保身に走り、自分が所属している組織をよりよくするための自発的な努力をしなくなる」と語った。
虐待的な管理職は、会社のために尽くそうという社員の気持ちをそいでしまう。人は酷使されていると感じたり、自分の仕事に満足できないとき、それが組織のためになるとわかっていても、余分な仕事をしたがらない。要するに、「やらなくていいことはやらない」という態度が蔓延してしまうのである。
“並外れた才能”は万能の免罪符であり、それさえあればたとえ底抜けのクソッタレでも黙認され、甘やかされ、お世辞をいわれる。わたしたちが住むこの世界のモラルなど、しょせんはそんなものなのだ。
たとえどんなに仕事ができても、他人の自尊心を傷つけるような人間は無能とみなされる-そういう職場で働きたいと願うのは、なにもわたしだけではないはずだ。
とても貴重で“替えがきかない”と思われていたクソッタレは、じつはたいして貴重ではなく、ほかの社員でもおなじくらいの仕事はじゅうぶんこなせることがわかる。
人格への攻撃は絶対に許されない。
たとえほかの仕事はよくできても、他人を貶めてばかりいる人間は、最終的に会社の足をひっぱるからだ。
もしクソッタレの巣窟だとわかったら、たとえどんなに待遇が魅力的でもその仕事につくべきではない。ダ・ヴィンチも言っているとおり、「最初に抵抗するほうが、あとになってから抵抗するよりも楽」なのである。
自分をゴミのようにあつかう会社に誠意をつくしたりは絶対にしない。職場の状況が劣悪な場合には、あなたがいくら仕事に情熱と努力を注ぎ込んでも、会社に搾取されることにしかならない。
スティーブ・ジョブズを失望させることほど怖いものはない。彼はこっちに全幅の信頼をおいてくれてるからね。
人に対する思いやりを大切にする会社のほうが、いじめや虐待をしている会社よりも高い競争力を持っている。思いやりを大切にし、クソッタレを許さない会社は、より多くのすぐれた才能を引き寄せるばかりでなく、人材の流出によって生じる経費を低く抑えることができるし、アイディアの交換も活発で、社員同士の競争心や嫉妬心から業務に支障が出ることもほとんどない。
ビジネスをたんなる”金儲け”とは考えずに、ひとりひとりの社員を尊重することが長期的に見れば会社の利益につながる。
最後の最後に、ここでわたし自身の信念をはっきりさせておきたいと思う。わたしは、「卑屈なクソッタレを職場からシャットアウトすることがたとえ組織の業績アップにつながらなくても、クソッタレ撲滅ルールはやはり実践すべきだ」と思っている。
人の内なる卑劣さや悪意を他人にぶつけるべきはない。
たとえクソッタレたちの行動がいかに合理的であろうと、わたしなら卑劣なゲス野郎と働かずにすませるほうを選ぶ。
たとえその仕事が魅力的で、どんなに収入がよくても、クソッタレのはびこっている職場で働いてはいけない。もしそんな職場に入ってしまったときには、できるだけ早く会社を辞めるべきだ。
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