EVA(economic value added:経済的付加価値)
■EVAは、「残余利益、ないし営業利益から資本の利用に対する費用を差し引いたもの」である。EVAは、DCF法の資本コストの考え方を応用しながら期間業績の評価を行うために工夫された方法です。EVAがプラスの年は、企業価値を増加させており、マイナスの年は企業価値を減少させたということになります。
会計の損益計算では、設備投資金額を減価償却方式で処理します。年によってばらつきの大きな設備投資金額の全額をその年の負担とすると、期間の業績評価の目的にそぐわないからです。EVAがFCFではなく減価償却方式である税引後営業利益を用いる理由も同じです。
・EVA=税引後営業利益(NOPAT:Net Operating Profit After Taxes)-加重平均資本コスト(WACC)
=税引後営業利益-{加重平均資本コスト率×(総資産-流動負債)}
総資産-流動負債=固定資産+流動資産-流動負債=固定資産+正味運転資本
・EVA=税引後営業利益-資本コストを満たすキャッシュフロー額
資本コストを満たすキャッシュフロー額=(有利子負債+株主資本)×WACC
■EVAの長所
- EVAの算定式からも明らかなように、当該指標は会計上の利益に加えて、それまでの収益性指標では考慮されなかった資本コストも考慮して株主に対する真の利益を測定するものである。EVAの最大の特徴は、利益と資本コストを結びつけた点にある。つまりEVAでは、利益が資本コストを上回る部分を経済的に追加された価値と考える。
- EVAを高めるには単に利益を大きくするだけではなく、資産の有効利用を図ること(例えば、売掛金の回収サイトの短縮、在庫削減、余剰・遊休資産の活用等)もあわせて求められることになる。この点で、従来の会計上の利益やキャッシュ・フローに比べると、資本の効率を重視した指標であるといえる
- EVAを用いれば、投資案の評価基準と業績の評価基準の間に整合性をもたせることが可能となる
- FCFモデルによる株主価値と連動している
- 単年度で計算できるため、業績評価に結びつけやすい
- 資本コストが考慮されている
- 成長という観点が入っている
- 良い悪いの基準が明確である
■EVAの注意事項
- 株主資本コストを、株主資本の簿価に掛け合わせて計算している
- 成長期にあるか安定期にあるのかによって変化する
- 株主資本コストの算定の難しさ
- 設備投資型の企業のEVAは低くなる可能性がある
- スターンスチュワート社のEVAの計算は財務データからの修正項目が多い
- EVAは金額であり比率ではない、他者比較が困難
- EVAで企業間比較等を行う際には、資本集約事業と労働集約事業との差異を考慮する必要があります。資本集約事業では償却資産も多額なので、減価償却費も高くなります。このため、利益率等の他の条件が同じであれば、資本集約事業よりもEVAは高くなります
■EVAとROA・ROEの違い
ROAやROEといった従来の指標とEVAとの違いは、前者が資本に自己資本コストを含めないのに対し、後者は負債の資本コストと自己資本コストの両方を含める点である。資本コストを完全な形で評価しないかぎり本当に価値が創出されているかは正確に把握できない、というのがEVAの前提である。
櫻井通晴『管理会計』、渡辺茂『企業価値評価の基本』、中橋國藏『経営戦略のフロンティア』、西山茂『企業分析シナリオ』、西山茂『戦略財務会計』、伊藤邦雄『企業価値評価』、久住正一郎『会社を強くする経営管理会計入門』
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