明らかな粉飾決算
1 減価償却不足・引当金の計上不足
2 棚卸資産の過大計上
- 棚卸資産の過大計上・・・・・①架空在庫を計上することによる粉飾、②滞留在庫の評価損を計上しない粉飾
- 架空在庫の兆候・・・・・①売上総利益率が前期比較で上昇(売上原価率は低下)、②在庫の金額を月商や日商で割った在庫回転期間が延長
- 架空在庫・・・・・①最も簡単に利益を操作することができる、②その発見が難しい⇒最重要課題として取り組む姿勢必要有
- 滞留在庫・・・・・評価減が必要
- 滞留在庫の兆候・・・・・①売上総利益率が前期比較で低下(売上原価率は上昇)、②在庫の金額を月商や日商で割った在庫回転期間が延長。この両者が兆候として現れた場合には、滞留在庫発生と考えてほぼ間違いありません。
- 期首の商品・製品と比較して、期末の在庫が2割も3割も伸びているということは、不良在庫、滞留在庫(在庫の積上がり)の発生を意味しています。滞留の発生は翌期の業績の悪化を予想させるわけです。小売業では致命的です。回転数の延長と、もし原価率が低下していれば、ほぼ間違いなく十中八九水増しです
- 在庫の滞留では原価率一定(または上昇)
- 在庫の水増しでは原価率低下
3 売上債権の過大計上
- 売上債権の過大計上・・・・・①架空売上債権の計上、②滞留債権についての会計処理が行われていない場合
- 架空の売上債権・・・・・①完全に架空の場合、②翌期の売上を先取り計上
- 翌期売上の先取り・・・・・①在庫回転期間が短縮、②売上債権回転期間が延長、③期末月の売上が極端に大きい、④翌期首月の売上がほとんどない、⑤期末に計上した売掛金の回収が回収のルールを無視して遅い
- 滞留債権=不良債権⇒貸倒引当金や貸倒損失の計上が必要
- 売上債権回転期間の延長、内訳明細書レベルでの滞留状況の調査(年齢調べ)⇒貸倒引当金または貸倒損失が必要
4 売上高の過大計上
- 売上高の過大計上・・・・・①完全に架空の場合、②実質的な未実現売上、③翌期売上の繰上げ計上、④営業外収益や特別利益の売上計上など。完全に架空の場合とは、在庫品を伝票のみで売上に計上して預かり品を仮装するケース、借入金を売上として計上するケースなどがあります。これらについては、注文書や送り状(控)などの証憑書類を見なければわかりません。
- 実質的な未実現売上・・・・・①販社や代理店の流通在庫となるような売上、②買戻し条件付売上(Uターン取引)、③会社の帳簿を通過するだけの売上(スルー取引)、④複数の会社がお互いに商品を売上げる取引(クロス取引)、⑤本支店間の売上(PLには計上してはならないもの)、⑥役員向けの売上(購入資金が会社から出ているもの)
- 翌期売上の繰上げ計上・・・・・①単純なケース、②売買契約のみでの売上や前受金段階での売上、③長期請負工事に該当しないケースでの工事進行基準
- 営業外収益や特別利益を売上に計上⇒営業利益や経常利益をカサ上げ
5 その他の流動資産の過大計上
- その他の流動資産の科目の合計金額が大きい場合⇒それだけで粉飾決算の可能性が大
- その他の流動資産の滞留⇒良いケースで固定資産、悪いケースでは損失が発生
- 金融機関の与信判断の実務・・・・・①中小企業のその他の流動資産は資産性なしとしてBSから取り除く、②さらに同額を純資産の部から取り除く
- 投資その他の資産⇒その他の流動資産と同様に資産性に乏しい
6 固定資産の過大計上
- 固定資産の過大計上・・・・・①固定資産の納入業者に過大に請求させて裏金として戻させるケース、②支払利息を原価算入するケース、③修繕費を原価算入するケース、④10万円未満の少額資産を計上するケース、⑤除却済みで存在しない資産を計上するケース。支払利息の原価への算入は、会社法上は不動産開発と自家建設の場合を除いては、これを行うことはできません
- 関係会社に対する投資有価証券/同じ会社に長期貸付金を持っている場合⇒①投資有価証券の評価と長期貸付金の評価を連動して考える必要有り、②債務保証がある場合にはそれも一体として見るべき
7 負債の過小計上
- 負債の過小計上を見抜くには⇒あらかじめ「あるはずである」項目を知っておくこと
- 支払利息割引料/(期首・期末平均の)借入金+割引手形⇒この比率が異常に高い場合には借入金が簿外となっているケースのほか、本当に高金利のところから借りているケースがあります。いずれにしても、会社としては末期症状であるといえます
8 関係会社を利用した利益操作
- 関係会社を利用した利益操作・・・・・①関係会社向けの売上、②有価証券・固定資産の売却益を計上、③経費の付回しを行って関係会社向けの債権として処理
9 表示上の操作による粉飾
- BSの各科目の名称や流動・固定区分/PLの科目名やどの計算区分に計上されているか⇒会社法会計ではこれらが誤っている場合には、意図していなくても粉飾決算。会社法決算では単に当期純利益だけを求めているのではなく、例えば流動比率によって安全性を判定したり、売上高経常利益率により収益性を判定したりすることを予定しているからです
- その他の流動資産が1年を超えて滞留しているケース/破産債権・更正債権等が流動資産に計上されているケース⇒共に固定資産であることから粉飾になる
- 表示上の操作の例⇒滞留売掛金と滞留買掛金を相殺して正常な状態に見せかけるケース
10 正当な理由のない会計方針の変更
- 利益を多く計上する会計方針への変更⇒①正当な理由に乏しい、②粉飾に該当する可能性が高い
都井清史『粉飾決算の見分け方』、都井清史『税理士のための新会社法実務ガイド』
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