設備投資の意思決定
■設備投資の三原則
- 投資予算額の大幅削減
- 資金調達の安定性
- 無税の減価償却を最大限に
■設備投資の決定手順
設備投資の案件には、以下のような手順で行う。
1.まず投資可能額の算定である
返済できるかどうかを決めるのは各会社の損益構造であり、財務構造である。会社はそれぞれ力を持っている。それを超えるものは単なる大博打である。設備投資のいわゆる予算化を行う。
2.次に資金調達可能額の算定
ほとんどのケースは借入可能額の算定になるため、物的担保額の評価がメインである。
3.投資採算性の算定
設備投資により増減する原価を計算し、採算売価を算定する。この採算売価で予想販売数量を吟味していく。吟味する過程で販売数量増減により設備稼働率が変化し、原価は変わる。
4.計画決定後、具体的な金額決定により生じてくる誤差を修正していく
これは重要である。当初二億円の予定がいつのまにか三億円となっている。二億円で採算計算しているものは三億円ではまずずっと赤字であろう。しかし現実にはよく起こっている。これをフォローしていく。できないものはできない。設備業者に違う型で同様な効果を考えてもらわなければなならない。
■設備投資を行うときの心構え
- 設備投資のために調達される資金の大部分は、自己資金で賄うこと
- 外部からの調達資金の割合は小さいこと
- 当該設備投資の稼動によって、高収益の製品の製造・販売が期待できること
- 当該設備資産から生産される製品以外にも、収益性の高い製品・商品を扱う事業を抱えていること
- 「将来において企業にもたらされるキャッシュフロー利益」を上回る設備投資は、絶対に行わないこと。設備投資は、日々の企業活動から稼ぐキャッシュフロー利益の範囲内で行え
■投資への手順
投資活動は次の4つに分類できる。
- 新製品の製造及び既存の製造設備を増大させるための拡大投資
- コスト削減などのための現有設備の取替投資
- 品質向上や省力化のための近代化投資
- 福利厚生施設や研究開発施設、教育のための戦略投資
いずれの場合も、次のような手順を踏むことになる。
投資のための方針の決定→方針に従った代替案の提案→代替案ごとの経済性計算→最有利案の選定→資金調達方法の検討→投資実施細目の決定→投資の実施とその結果の評価
■設備投資をする際に検討しなければならない点
- 設備投資によって固定費は、どれだけ増えるか
- 設備投資によって採算点は、いくらになるか
- 設備投資によって利益は、いくら確保できるか
- 設備投資によって必要な売上高はどれだけか
- 設備投資によって増加運転資金はどうなるのか
■過剰投資で失敗しないための3点見積法
3点見積法とは、米国防総省やNASAなどで利用されているPERTという工程計画を管理する手法の中の1つです。不確実なことを予測するときに、楽観値(すべて見込みどおりにいくと見積もった値)、悲観値(最悪のケースを想定して見積もった値)、最可能値(今までの経験から実現可能性が高いと見積もった値)の3点を予測して考えるやり方です。
設備投資をした後に、最悪のケースとなった場合の資金ショートの可能性を予測することが大事なのです。
上坂朋宏『会計士が贈る経営のヒント』、高田直芳『ほんとうにわかる経営分析』、吉田博文他『粉飾決算の見抜き方』、青木三十一『「資金繰り地獄」から抜け出す本』、
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