商業と製造業の粗利の考え方の違い
■商業
売上高-変動費(仕入原価)=限界利益(粗利益)
■製造業
製造原価には、工場で働く作業者の人件費や製造、経費も含まれています。そのため製造業では売上総利益にかえて「加工高」を重視します。加工高を「付加価値」と呼ぶこともありますが、これが商業における粗利益に相当するのです。
売上高-(材料費+外注加工費)=加工高(付加価値)
加工高=工場人件費+粗利益
(注)外注加工費は、製造直接費(直接経費)。外注加工賃には、外注先の労務費のほか間接費や利益も含まれるので、労務費ではなく特別経費として取扱う。外注加工において、材料の一部を外注先に負担させる場合には、外注加工賃に材料費が含まれる。このような複合経費は外注加工費と呼び、外注加工賃と区別する。まぎらわしいが直接労務費と製造間接費とを合わせて加工費という。
■売上総利益、粗利益、限界利益、付加価値の関係
おおざっぱに、製造業では加工高、商業では粗利益を付加価値と考えても差し支えありません。
商業では、売上総利益、粗利益、限界利益の三つは同じものです。しかし、製造業は、限界利益と付加価値は同じですが、売上総利益イコール限界利益にはなりません。製造業の限界利益は売上総利益よりも大きくなります。
なお、厳密には、粗利と限界利益は少し違う。粗利は、売上から仕入原価を引いた値をさす場合が多い。限界利益は、売上から仕入原価のほか、売上に伴う変動的な費用をすべて引いた残りの額である。
■PL上の粗利(売上総利益)
商業 売上高-売上原価(商品原価)
製造業 売上-売上原価(材料費+労務費+経費)
石上芳男『会社の数字ここを押さえれば簡単だ!』、武田隆二『簿記Ⅱ』、岡本清『原価計算』、西澤脩『原価計算』、原田盛夫『採算計算に強くなる本』、アレン・B・ボストロム/広瀬元義『イン・ザ・ブラック』、柴山政行『一目で見抜く!財務諸表解読法』、高下淳子『決算書を読みこなして経営分析ができる本』
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