直接原価計算
■直接原価計算と全部原価計算
全部原価計算は“この製品をつくるために全部でいくらかかったか”をつかむため(プライシング目的)に誕生した。その手順は製品原価の中に変動費も固定費もコミにして計算する。
ところが、変動費と固定費を一緒にするこの手法は、ある種の長所にもかかわらず、意思決定の手段としては採算状態と製品戦略の判断を惑わす場合がしばしばある。すなわち、原価に固定費が入ると売上げが同じでも在庫が増えると利益が増える(在庫品の原価の中に固定費が繰り延べされ当期費用が少なくなるため)という“棚卸資産のマジック”がおき、期間の経営状態をしばしば誤らせてしまう。
在庫が増えることを覚悟して、大量に作ればつくるほど、1個あたりの製造原価、売上原価は下がるので、在庫は増えるもの、PL上の利益は表面的に「増える」ということになる。
この全部原価計算の欠点を克服するのが「直接原価計算」という考え方である。直接原価計算では、固定費をすべて期間の費用として引いてしまうので、操業度に関わりなく損益計算ができるという大きなメリットがある。
■直接原価計算のデメリット
- 固変分解は、そのシステム対応を含めて難しいことが多い
- 製造原価が正確に把握できない。固定費をすべて期間費用としてとらえるために、在庫としての価値は、変動費だけの価値となってしまいます。
- 直接原価計算は財務会計上認められていないため、財務諸表作成のためには、再度全部原価計算を行わなければならないという二度手間となる
小宮一慶『「1秒!で財務諸表を読む方法」』、協和醗酵工業㈱『人事屋が書いた経理の本』
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