特殊支配同族会社の特別規定
■特殊支配同族会社の特別規定とは
代表者報酬が会社の所得と合わせて1600万円を超えれば、代表者の給与所得者控除分(役員報酬の30%程度)が、会社の所得に加算されしまうのです。端的にいえば、社長の給与の一部が会社の経費で落ちないということです。
この規定は同じ同族会社でも比較的規模の大きい高収益企業を対象に課税されてきた留保金課税を緩和する見返りに、数字合わせのため急ごしらえに作られた法律ともいわれています。
■対象者
この規定の対象となるのは、1同族グループで株の90%以上を持っている特殊支配同族会社のことです。同族グループとは、親族や生計を一にするもののグループです。
■具体的判定(社長給与が経費になる目安)
1.90%基準(株主構成からの視点)
オーナー一族の持株割合が、当期末時点で、90%以上かどうかが判定基準になります。
2.過半数基準(役員構成からの視点)
役員について、オーナー一族が常務に従事する役員の過半数を占めているかどうかが判定する基準になります。名義だけの非常勤の役員はダメです。あくまで、非常勤を除き、常勤役員がオーナー一族で過半数を占めるかどうかがポイントになります。
■業務主宰役員
特殊支配同族会社とは、事業年度終了時において、次のいずれかに該当する同族会社で、業務主宰役員および「常務に従事」する「業務主宰役員関連者」の総数が、常務に従事する役員の過半数を占める会社をいいます。
- 業務主宰役員グループが、その同族会社の発行済株式総数の90%以上を保有している会社
- 業務主宰役員グループが、その同族会社の一定の議決権の90%以上を保有していること
- 業務主宰役員グループが、その同族会社(合名会社、合資会社または合同会社に限る)の社員の総数の90%以上を占める
「業務主宰役員グループ」とは、業務主宰役員と特殊関係者等ならびにこれらの者が支配している同族会社を一のグループとした場合のそのグループをいいます。
ここでの業務主宰役員とは、経営の実権を握り、資金繰りや経営方針を決定しているオーナー経営者のことです。実質的に、会社経営に最も中心的に関わっている特定の役員「1人」のことです。
取締役会のメンバーとして業務執行に関する意思決定に参画するに過ぎない役員や監査役、会計参与などは常務に従事する役員には該当しません。
■特別課税を逃れる方法
1.特殊支配同族会社にならないようにする
特定同族会社にならならないためには、株を2グループ以上に分散すればいいのです。つまり、オーナー一族の持株割合が、90%未満になれば、一応ストライクゾーンから外れることになるわけです。親族や愛人などに分散しても1グループに数えられてしまいますので、それ以外の第三者に株を引き受けてもらうことになります。具体的に言えば、知人や友人ということになります。
株を第三者に持ってもらうことは、経営者としては不安になるかもしれません。その場合は、株式譲渡制限会社(株を誰かに譲る場合は会社の承認を得なくてはならない会社)にしましょう。株式譲渡制限会社にすれば、株が知らないところに渡って、経営をかき乱されるということもありません。
ただ以上の方法は、基本的におすすめできません。なぜなら、形式上、90%未満に薄めたとしても、実態が伴っていなければ、経済的合理性の観点から、税務署から否認されるからです。
2.社長の報酬と会社の利益の合計が1600万円を超えないようにする
1600万円の規定にひっかかるのは、代表者の報酬だけです。代表者の妻や家族などの報酬は関係ありません。だから、妻が会社の役員をしているような社長は、自分の報酬を低く抑えて会社の所得と合わせても1600万円以下とし、妻の報酬を上げればいいのです。ただし、妻がそれなりに仕事をしていなければこの方法は使えません。
わかりやすく言うと、次の数字になっていれば、回避できます。
- 「会社の最終利益+社長給与」・・・・・1600万円以下
- 「会社の最終利益+社長給与」・・・・・1600万円超3000万円以下、かつ、社長給与の占める割合50%以下
■特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度に関する質疑応答事例(平成18年12月)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/01.pdf
岩佐孝彦『社長は「会社のお金」をこう残せ!』、大村大次郎『社長!税務調査はこうして乗り切れ』、近藤学『「儲からない」と嘆く前に読む会計の本』、高下淳子『法人税と経営処理のしくみがわかる本』
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