経常収支比率は倒産予知に役立つ
■経常収支は、正しくは運転資金収入超過あるいは運転資金の資金余剰などというべきものであって、次の式で算出する。
運転資金収入超過=(経常利益+非資金的費用)-(売上債権等増加+棚卸資産等増加-仕入債権等増加)-負債性引当金目的使用
■経常収支比率=経常収入/経常支出
経常収支=経常収入-経常支出
経常収入=売上高-売上債権増加+営業外収益
経常支出=費用-非資金的費用+棚卸資産増加-仕入債務増加
経常収支比率は割り算の世界であり、経常収支は引き算の世界である。
経常収支比率は経常収入と経常支出の比率ですが、100%を下回れば危なそうだということは誰にでもわかります。(都井)
経常収支比率は、少なくとも100%以上、できれば110%以上が望ましいとされる。100%未満が2~3期、連続して続くと、資金繰り状況がかなり悪化しているといえる。つまり経常収支がマイナスなら、経常収支比率は100%割れ、経常収支がプラスならば、経常収支比率は100%超となる。(鯖田)
なお、CF計算書は、経常収支分析の考え方がベースとなっています。
■そこで、経常収入のほうに着目してみましょう。
経常収入=売上げ-売上債権の増加+営業外収益
売上債権 | |
期首 10 | 回収 80 |
売上 100 | 期末 30 |
経常収入=100-(30-10)=80
このなかで収入はどこですか。収入は回収した分の80です。これを入れようとしているのです。この算式が意味するところは、売上債権が増えれば増えるほど収入、回収が少ないわけです。
例えば、翌期売上げを先取りした場合、経常収入はどうなるのか。翌期売上げの先取りは売掛金の売上げにつながります。売上げは増えますが、それはそのまま翌期の売上債権になるわけです。つまり翌期売上げの先取りというのは、期末の債権が増えるだけのことです。ということは、回収に影響してこないわけです。翌期売上げの先取りはこの比率に影響を与えません。PLで粉飾しても資金繰りは正直だということです。回収と支出のほうは客観性が強いので操作しにくいわけです。翌期売上げの先取りをしても、売上げた金額はそのまま債権増加とイコールですから、この金額そのものは変化しません。PLで利益をつくっても、この比率をみたらわかるということですね。
ただ、この比率は、例えば、もうどうしようもないから投売りで換金化した、大安売りのバーゲンセールをやったときには、安い金額でも収入が増えますので、この比率は変化するわけです。即売会を開いて思い切り安く売ってしまったという場合なら変化します。したがって、万能ではありません。限界がありますので、それを知りながら利用してください。
都井清史『粉飾決算の見分け方』、森脇彬『経営分析実務相談』、鯖田豊則『会社を目利きする50のポイント』、杉山浩『粉飾決算書を見抜け!』、末松義章『倒産・粉飾を見分ける財務分析のしかた』、高下淳子『決算書を読みこなして経営分析ができる本』
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