会計発生高(アクルーアルズ:accruals)
■会計発生高は、経済的事実の発生および期間対応という2つの見地から計上される、営業活動によるCFに対する発生主義会計固有の調整額のことである。すなわち、会計発生高は営業活動によるCFと会計利益の差額に他ならない。会計発生高は、会計処理を行った時点と実際に現金もしくは現金同等物が流入・流出する時点が異なるような項目、具体的には、売上債権、仕入債務、経過勘定項目の対前年度変化額あるいは減価償却費、引当金の計上額といった項目から構成される。
会計発生高はすべて経営者の裁量に応じて計上されるのではなく、非裁量的な部分(非裁量的発生高)も含むことである。非裁量的な部分すなわち非裁量的な発生高は、会計システムによってシステマティックに計上され、経営者の裁量の影響を受けないと考えられる部分である。経営者の利益調整行動を明らかにするためには、会計発生高から非裁量的発生高を控除して、裁量的な部分を抽出する必要が生じる。この手順に従って抽出された部分が裁量的発生高と呼ばれるものであり、会計利益を構成する要素のうち、経営者が利益調整を行った部分として識別される。
経営者の包括的な利益調整行動が集約された変数としてわれわれが注目するのは、この裁量的発生高である。
■会計発生高=(当期純利益+特別損失-特別利益)[会計利益:税引後経常利益]-営業CF[現金利益]
会計利益=経常利益×60%
会計発生高が大きい会社に気をつけろ!。計算式に注目してください。もし、特別損益がまったくないうえに、営業CFの増減要素が少なければ(=減価償却も小さく、売掛金や在庫水準が毎期ともほぼ一定であれば)、「当期純利益≒営業CF」となるわけですから、会計発生高はほとんど生じないはずです。
逆に、会計発生高が大きいということは、まだ現金になっていない利益がたくさん計上されている、という意味です。
売上高が大きく変わっていないにもかかわらず、利益が上がって営業CFが減った、あるいは、利益が上がりつづけているけれど営業CFはいつまでたってもプラスにならないというような会社は、「売上高の計上方法がなんだかおかしい!」と考えられるわけです。
■
須田一幸他『会計操作』、勝間和代『決算書の暗号を解け!』
« 内部利益率法(internal rate of return:IRR) | トップページ | 損益分岐点分析(break-even point) »
「経営分析」カテゴリの記事
- 都井清史『業種別エキスパート経営分析』きんざい(2017.04.27)
- 古田土満『ダントツ人気の会計士が社長に伝えたい 小さな会社の財務コレだけ!』日経BP社(2017.04.03)
- 小宮一慶『「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』PHPビジネス新書(2017.03.20)
- 田中威明『取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意』経営者新書(2016.12.05)
- 内田正剛『「不正会計」対応はこうする・こうなる』中央経済社(2016.10.02)
« 内部利益率法(internal rate of return:IRR) | トップページ | 損益分岐点分析(break-even point) »
コメント