払込資本を資本金と資本準備金に分ける理由
■会社法の払込剰余金
会社法では、株主の払込資本を全額、資本金とすることが原則規定であるが、特例的な規定として、払込資本の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができるとされている。したがって、払込資本の2分の1が資本準備金とされる。この点で、形式上は、従来と変わりはない。
■資本金は会社がその資本の中でも最も基本的なものであると宣言した部分であり、資本準備金はそれに対する緩衝材の部分である。車でいえば、資本金は本体であり、資本準備金はそれを守るバンパーあるいはクッションなのです。会社の業績が落ち込んで欠損金がでたときに、資本準備金を取り崩して解消することになります。
株式を発行した場合、2分の1までを資本金ではなく資本準備金とすることが認められています。そして、通常、全てを資本金としないで、一部を資本準備金とします。なぜかというと、そうしておかないと、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで、配当を行うつど、資本準備金又は利益準備金を積み立てなければならなくなり、配当できる額が制限されてしまうからです。
■利益準備金の積立は、資本準備金と利益準備金の合計額が、資本金の4分の1に達するまで行われなければならない。しかも会社法はこれを分配不可能な部分としている。このため資本金の額が多いほど分配不可能とされる利益も多くなる。したがって、企業はそのような拘束額を最小にする目的で、会社法上の最低限度しか資本金に組み入れないのが普通である。
■資本金は、現金配当等の分配活動には活用できないため、その金額が大きくなればなるほど分配不能な部分が多くなり、会社にとっては分配活動の拘束が増すことになるために、資本金への組入れは最低限にとどめるのが一般的です。
会社法では、資本準備金と利益準備金の取扱いに相違はなく、いずれも配当対象となる剰余金を計算する際の控除項目として、会社財産の社外流出の歯止めとなる効果をもつものとして位置付けています。
永野則雄『ケースでまなぶ財務会計』、鈴木広樹『株式投資に活かす適時開示』、武田隆二編『新会社法と中小会社会計』
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