ROA(Return on Asset:総資本利益率)
■ROAとは、会社が最低限稼がなければならない資本効率を簡単に設定できる重要指標です。
企業が事業を行なうために所有している財産、つまり総資産を使って、どれだけの利益を上げているのかをあらわす指標である。これは投下した資金からみて、事業が効率良く行われているか否か、つまり経営がうまく行われているか否かを表しているものである。
ROA=(経常利益/売上高)[経常利益率]×(売上高/総資本)[総資本回転率]
ROAは、2つの重要な指標に展開されます。まず「収益性」を表す「売上高経常利益率」、そして「資本効率」を表す「総資本回転率」です。「売上高経常利益率」からは、会社の総合的な利益獲得力を知ることができます。「総資本回転率」からは、どれだけの資産でどれだけの売上を上げているのかという効率を知ることができます。
ただ、この2つの比率を同時に高めることは難しく、一般的には片方を上昇させようとすると、もう一つが低下してしまうというようにトレードオフになっている傾向が強い。
ROAは、一般的には、「経常利益」で計算します(上場企業は当期純利益)。が、金利差引前経常利益を使うこともある。つまり、事業そのものの収益性を純粋に見ていくためには、負債、つまり借入金や社債が多い少ないといった財務面での影響を除いた利益で比較する方がよいと考えられるためである。ただ、実際には、リターンとして経常利益や当期利益を使うケースもある。しかし、借入金や社債の比重がかなり違う企業のROAを比較するような場合には、支払利息や社債利息によって経常利益や当期純利益がかなり違ってくる可能性があるので、やはり金利差引前経常利益を使うことが望ましい。
なお、事業そのもの効率を分析するという意味では、分子のリターンを営業利益として、資産の中から現金預金+有価証券などの金融資産を差し引いた営業資産を分母としてROAを計算することも考えられる。
◇その他論者の参考指標
・ROA=(税引前当期純利益+金融費用)/当期平均総資産
・(中小企業の経営診断)経営資産営業利益率=営業利益/当期平均経営資産
経営資産=総資産-(建設仮勘定+遊休資産+貸与設備+社外投資)
・総資本当期事業利益率=当期事業利益/総資本
当期事業利益:①営業利益②金融収益③金融費用、①+②-③=④税引前当期事業利益、⑤当期負担税額=④×40%、⑥配当金、当期事業利益=④-⑤-⑥
・使用総資本事業利益率=事業利益(営業利益+受取利息・配当金)/使用総資本
企業は総資本を利用して、経営活動を行った後に、債権者には利子を支払い、株主に配当を支払う。したがって、分母の総資本にフィットするような利益概念は、営業活動の成果たる営業利益に、財務活動の成果である受取利息・配当金を加えた「事業利益」ということができる。
■ROAのメリット
計算が簡単である
■ROAの注意事項
- 資本コストが反映されていない
- 効率だけを考えているので、縮小均衡に陥る可能性がある
- 取得原価主義
- リターンとして利益を使っているため、数字の客観性に問題が生じる可能性がある
- 企業間比較が難しい(特に業種が違うような場合)
■ROEは株あたり、ROAはビジネスそのものの収益性
久野康成『あなたの会社を永続させる方法』、西山茂『企業分析シナリオ』、高田直芳『経営分析バイブル』、森脇彬『経営分析実務相談』、西山茂『戦略財務会計』、伊藤邦雄『ゼミナール現代会計入門』
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