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2009年5月 5日 (火)

WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)

■WACC

資本コストとは、企業価値や株価を維持するのに必要とされる収益率のことであり、債権者に対して利子を支払った上で、株主が要求する収益をあげられる水準ということになる。したがって、企業の資本コストは、債権者の必要収益率(負債コスト)と株主の必要収益率(株主資本コスト)を加重平均することによって推計することができる。このため、企業の資本コストは加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる。

WACCは、負債の調達コストと純資産の調達コストをそれぞれの使用比率を加重平均したものです。負債投資家と株主投資家の取り分を合わせたキャッシュフローを割り引く場合に使います。

負債資本コスト:3% BS負債の部:80(構成比80%)

株主資本コスト:10% BS純資産の部:20(構成比20%)

(その1) (80×3%)+(20×10%)/80+20=4.4%

(その2) 0.8×0.03=2.4% 0.2×0.1=2% 2.4+2=4.4%

■負債と純資産の調達コスト

負債の調達コストは、「金利」です。

純資産の調達コストは株主の期待利回り、と考えられています。

負債の調達コストよりも、純資産のコストのほうが、ずっと高いのです。純資産の調達コストは、正確にはCAPMという定義に従って計算します。

自己資本比率が高い(つまり、純資産が大きい)企業のほうがWACCは高くなります。負債の調達コストよりも、純資産の調達コストのほうが高いからです。

WACCが高い=高リターンを期待される、という関係になっているのです。

ROA(利益/資産)はWACCより高くなければなりません。資金の調達コストより高い利益率を出さなければならないからです。

ROAを算出する際の利益は営業利益です。WACCと比較する際には、金利を支払う前の利益と比較する必要があるので営業利益で計算するということになります。

ROAは企業の資金調達コストを上回らなければならない。特に、金利などが調整される前の営業利益段階においては、資金調達コストよりROAが低ければ必然的に資金調達コストを事業がカバーしていないこととなる。

つまり、(営業利益ベース)ROA≧WACCである必要があるのです。

■金利が総資産利益率より高くなったら借入金を減らせ(日経新聞2008/3/15)

■最適資本構成

企業にとって、E(エクイティ)とD(デット)の最適な比率とは、どのようなものだろうか。

EとDでは、Dのほうが資本コストが小さいので、それだけで考えると、Dが多いほうがいいことになる。では、Dがほとんどでいいかということ、難しい問題が出てくる。まずは、Dには厳密な返済条件とスケジュールがあるので、想定よりも悪いシナリオとなってしまった場合は債務不履行、つまり倒産のリスクが高まる。キャッシュフローの想定シナリオが確からしければDは多めでよいかもしれないが、想定がさほど確からしくない場合は、資本コストが高いとはいえEに頼らざるをえなくなってくる。逆にいえば、Eの比率が高ければ高いほど、不確実性に対応することがより可能になり、このことを「財務的柔軟性」と呼ぶこともある。

まとめると、DとEの比率は、資本コストと財務的柔軟性のトレードオフで決まるといえる。現実には、それぞれが20~80%の範囲内に収まっていることが多い。

渡辺茂『企業価値評価の基本』、小宮一慶『「1秒!」で財務諸表を読む方法』、井手正介『経営財務入門』、小宮一慶『戦略経営のための管理会計入門』

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