支払利息の原価算入(自家建設)
■自家建設
固定資産を自家建設した場合には、適正な原価計算にしたがって製造原価を計算し、これに基づいて取得原価を計算する。建設に要する借入資本の利子で稼動前の期間に属するものは、これを取得原価に算入することができる。
しかし、会社が成立してから開業に至るまでの期間において固定資産を自家建設した場合、建設期間中の支払利息は、固定資産に算入することが必要である。しかし、開業後、社債発行資金で自家建設を行った場合にその稼動前の社債利息を建設仮勘定の借方記入項目として扱うかどうかは、企業の任意の判断に任されている。もちろん、建設が完了した後の社債利息は、資本的支出として扱わず、営業外費用として処理する。
借入金利息の原価算入論の論拠は、すなわち当該固定資産が事業の用に供される前は、それの利用から生ずる収益は存在しないのであるから、費用のみを先に計上することは収益・費用対応の見地から好ましくないので、資産原価に含めて将来の収益との対応関係を図ることに求められる。
しかし、会社成立後における建設に要する資金を借入資金によるか自己資金によるかは、会計上の問題とは別個の金融上の問題であり、かつ、その金融手段のいかんによって資産原価の大きさが異なる結果をもたらす。資産原価はもともと当該資産がもたらす将来の用役潜在力を貨幣金額的に表わしたものと解するかぎり、借入資本利子の支払が資産の用役潜在力を高める原因とはならないという理由で、反論がみられる。
■借入金利子と税務上の取扱い
固定資産の取得に要した借入金の利子は、固定資産の所有者の債務利子であって、固定資産自体の債務利子ではないから、理論上、固定資産の原価構成要因とはならないのである。すなわち、債務利子は人的関連費用であり、固定資産それ自体にかかる物的関連費用ではないことに注意されたい。
税務の取扱いでは、固定資産の取得に要した借入金利子は、たとえその使用開始前の期間に係るものであって、取得原価に算入しないことができることとしている。
(借入金の利子)
7-3-1の2 固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、これを当該固定資産の取得価額に算入しないことができるものとする。(昭55年直法2-8「二十一」により追加)
(注) 借入金の利子の額を建設中の固定資産に係る建設仮勘定に含めたときは、当該利子の額は固定資産の取得価額に算入されたことになる。
武田隆二『最新財務諸表論』『法人税法精説』
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