シドニー・フィルケルシュタイン『名経営者が、なぜ失敗するのか』日経BP社
〝不誠実な組織〟というべきもの、すなわち、正しい意見や考えを沈黙で封じ込める〝組織〟である。
組織内に事実を話しやすい土壌をつくれ。現場責任者や従業員が懸念や提案をためらいなく口にできるようにするには、経営陣が率先してそんな〝社風〟をつくらねばならない。
企業の失敗や不正行為を系統立てて検証し、失敗の早期警告サインを見逃さない眼を養い、そして万一不祥事が生じた場合の善後策を講じる力を養わなければならない。
本書は、経営者という〝人間〟についての研究である。
優秀企業は、たいてい四つの局面で失敗している。
- 新規事業に乗り出すとき
- イノベーションの導入や変化に対応するとき
- M&Aに乗り出すとき
- 競争相手に反撃するとき
企業のライフサイクルにおいて、誕生時は最も死亡率が高い時期である。
これは時代に対する自信過剰がもたらした失敗だったと思います。どこかの街でテスト・マーケティングをしてコンセプトに磨きをかけようともせず、彼らはいきなり世界に乗り出した。一番乗りを焦るあまりの暴走です。
所有者が経営の座につくと、放漫経営が減るどころか、ありとあらゆる問題が起きかねない。
大きな失敗には必ずその途中に引き返せる瞬間がある。問題に気づき、それを修復できる瞬間があるものだ。
〝ベンチ組〟にもやらせてみなければ力がつかない。
新興企業のCEOや幹部たちは、自分たちが絶対に正しいと思い込む傾向が驚くほど強い。
イノベーションは勝手にわいて出るものではない。それは風通しのいい開かれた社風からかもし出されるものである。
デューデリジェンスとは要するに、欠陥品をつかまないために注意することである。
シナジーは逃げ水のようなもの。買収前に地に足をつけてどれだけのシナジーが期待できるのか、特にマイナスのシナジー、時間のプレッシャー、それにかかる費用などを、よく考えておくことだ。
自らを破滅に追いやる四種類の症候群(シンドローム)
- 経営陣が自分の会社に対する現状認識を誤っていた
- 企業組織を構成するトップから従業員までが自社の現実と向き合わなくなっていた
- 企業組織内の情報システムと管理システムが誤って運用されていた
- リーダーが間違った習慣を身につけてしまっていた
取り返しのつかない大問題に至るまでに、必ずいくつかの小さな失敗が先立つものだ。
先行優位性は、よしんばあったとして、三つの源から生まれる。
- 学習曲線で先行して後発組より多くのノウハウを見つけられること
- 最も優れた固定資産に先につばをつけてしまうこと
- 顧客やサプライヤーを囲い込み、ライバルに取引を切り替えようとすると非常にコストがかかるようにすること
企業は、それまでの成功が華々しいほど、その勝因に囚われて、自己変革能力を失ってしまう。ビジネスの金言を突き詰めれば、「うまく行っているものを下手にいじくるな」ということだ。しかし、こうしたモットーのせいで、大きな変化を起こせなくなってしまう。成功の度合いが大きいほど、変わろうとする意欲を持たなくなるのだ。
問題の可能性に気づいたら、その問題に取り組むべき人々の意識をそこに集中しなければならない。となると、好ましくない情報を組織にすばやく伝達する方法が必要だ。
最も効率の良い方法のひとつは、目標を達成したら、そのハードルをさらに高めていくのではなく、目標そのものをそっくり変えてしまうことだ。
失敗するトップの〝七つの習慣〟
- 自分と会社が市場や環境を〝支配している〟と思い込む
- 自分と会社の境を見失い、公私混同する
- 自分を全知全能だと勘違いする
- 自分を100%支持する人間以外を排斥する
- 会社の理想像にとらわれ、会社の〝完璧なスポークスマン〟になろうとする
- ビジネス上の大きな〝障害〟を過小評価して見くびる
- かつての成功体験にしがみつく
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