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2011年2月24日 (木)

PIMS(市場戦略の利益効果):Profit Impact of Market Strategies

ハーバード・ビジネススクールのマーケティング・サイエンス・インスティテュートで、市場戦略の違いによる収益性の変化に関する研究が行われた。PIMSと呼ばれるこのプロジェクトは、15年の以上の歳月をかけ、600社を上回る企業を対象に行われた。

この研究から明らかになった点は、次のとおりである。

  1. 絶対的・相対的マーケット・シェアは投下資本収益率(ROI)と強い関係になる。高いシェアを誇る企業ほど規模の経済や経験効果が働き、市場での影響力が強く、優れた経営手腕を持つため、収益性が高くなる。
  2. 製品の品質は市場のリーダーシップを確立する鍵であり、シェアの高い企業ほどプレミアム価格で高いマージンを得られる。
  3. ROIと市場成長率は正の相関関係にある。
  4. 垂直統合は製品ライフサイクルの後半期に有利となる。部分的な垂直統合は避けたほうがよく、後方統合より前方統合のほうが収益性は高い。
  5. 投資を集中させたり在庫水準を高くするとROIは低下する。
  6. 資本集約的な企業では稼働率が重要となり、シェアの小さい企業ほど影響を受けやすい。

以上の研究結果は、1980年代における企業の成功の多くを解き明かすと同時に、なぜ1990~2000年代初期にかけて企業の収益が低迷したのかを考えるうえでも役立つ。しかし、PIMSプロジェクトの結果は当時は有効に働いていたが、いまだにPIMSの研究結果が妥当性を持つ事業環境は急速に失われつつあるといえる。

PIMSのプロジェクトは、異なる状況下にある多様なビジネスの経験を集積し、実証的に利潤パフォーマンスの影響要因を探り、もって戦略市場計画への示唆を与えようとする調査研究である。

この試みは当初、GE社の内部プロジェクトとして、同社の市場戦略パフォーマンスの説明と予測の方法を解明するために発足したが、その後、ハーバード大学、マーケティング科学研究所(MSI)にその研究母体を移し、多様な事業を対象に戦略の利潤パフォーマンスへの影響要因の関連性を探る大型プロジェクトに拡大している。

この研究の基本目的は、(a)各種ビジネス間の投資収益率(ROI)やキャッシュ・フローの差異を説明する要因の洗い出し、(b)所与の市場状況への戦略で、ある特定のビジネスが「通常」(ないし“par”)で、どの位の投資収益率とキャッシュ・フローをもつかの解明、(c)特定のビジネスにおいて、ROIや他のパフォーマンスが戦略変更によってどのように影響を受けるかの解明、(d)特定ビジネスのパフォーマンス向上の手がかりの解明、などである。

SPIから出されたPIMS報告のなかで、9つの発見が簡潔に示されている。

1.ビジネス状況(特定対象市場における製品・サービスをめぐる売手競争行為の状況)は通常、定期的で予測しうる形で動く。従って戦略市場計画は実証科学的方法を通じ法則性を理解することによって応用科学の領域となる。

2.あらゆるビジネス状況は基本的に同じ市場法則に従う傾向がある。

3.その市場法則は、多様なビジネス全般の観察から得られた業績(ROIやキャッシュ・フローなど)の約80%を決定している。つまり、市場、ビジネス、競争の特性から戦略成否の80%までが説明できる。

4.業績結果を規定する主要因は、その重要度の順で次の9つがあげられる。

  1. 投資集中度:投資集中度は一般に利益比率と純キャッシュ・フローにマイナスのインパクトを与える。
  2. 生産性:一人当り生産性(付加価値)は確実に利潤にプラスの影響をもつ。
  3. 市場地位:相対市場シェア(競争大手三社のシェア合計と自社シェアの比率)は、利潤とキャッシュ・フロー双方にプラスのインパクトをもつ。
  4. 対象市場の成長性:当該市場の成長率が高い場合、利潤額にとってはプラス、キャッシュ・フローにとってはマイナス、利潤率にとっては無差別の影響をもつ。
  5. 製品・サービスの質:顧客サイドからみた高品質はすべての財務業績結果にプラスとなる。
  6. イノベーションと差別化:市場地位の高い企業の場合、イノベーションや差別化はプラスの業績、市場地位が低いときは無意味になる傾向がある。
  7. 垂直統合:市場が成熟・飽和型なら垂直統合はよいが、成長・衰退段階なら垂直統合は悪い業績となる。
  8. コスト上昇:コスト上昇はパフォーマンスに複合的なインパクトを与えるが、上昇分を顧客転嫁したり、内部吸収しうるなら問題なし。
  9. 既存戦略努力:既存戦略の変更は別の戦略のプラス、マイナスをつくり、全体パフォーマンスに複雑なインパクトを与える。

5.上記9要因の戦略結果は複雑にからみ合って決まる。従って、一つのみの要因と業績の関係を単純に考えるべきでない。

6.業界や製品特性を越えて、戦略要因とパフォーマンスとの関係には法則性が存在する。

7.戦略上の因果関係は時間と共に明白になっていく傾向がある。

8.ビジネス戦略(戦略市場計画)はその基礎がしっかりしているほど成功確率が高く、逆なら失敗確率が高くなる。

9.戦略は明示的であるほど強い。

このPIMSから得られた大きな成果としては、市場シェアとROI(投資収益率)との間の正の相関をある程度定量的に実証したことが挙げられる。具体的には、市場シェアに10%の差があると、税引き前のROIには平均で5%の差が生じることが実証データから示されたのである。これは言い換えれば、企業は経営戦略として10%市場シェアを高めることができればROIを5%向上させることができるということであり、ROI5%分の範囲での投資によって市場シェアを10%高められるのであれば、その投資は正当化できるという判断の根拠になり得るという発見である。

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