法人成り:その2
■現金や売掛金をどう処理するか?
法人成りしても、入金や口座引落としで通帳が動きそうな場合には、一定期間その口座は解約せず、維持しておいたほうが無難。
法人成りの日に残っている通帳や売掛金の残高は、そのままにして会社に引き継がなくてもいい。
■在庫をどう処理するか?
個人事業最後の日に棚卸しをして、残った在庫を「時価」で法人に売却することになる。しかし、通常の一般小売価格、つまり時価で売買すると、個人事業側に利益が出てしまう。自分の会社に売ったのに利益が出るため、所得税が課税されてしまう。ここが、第1の法人成りした場合の引継ぎのデメリットである。
第2のデメリットは、消費税。いくら自分と自分の会社との「売買」だとしても、消費税が課税される。会社のほうは、法人成りのメリットを利用した「免税事業者」となれば問題はない。しかし、個人事業主時代が消費税の課税事業者である場合、なんとこの在庫の取引に関する消費税の納税義務が発生してしまう。ただし、個人事業主が免税事業者であれば、この問題は発生しない。
■固定資産をどう処理するか?
土地や事務所は、「不動産」だから、登記上の名義人の問題も絡む。加えて、その不動産を所有するのに、銀行担保として抵当権が設定されているケースも珍しくない。そのため、会社へ名義を変えるのは実務上不可能であることのほうが多い。これらは、「会社へ引き継がない」ことをオススメする。
この場合、会社に貸してあげたらどうだろうか。適正な賃料をもらえば、個人も会社も税金の増加にはつながらない。ただし、個人事業が廃業しても、この場合、「不動産所得」が発生するので、引続き「確定申告」をしなければならないのがデメリットになる。
機械を買ったときに借入れなどがあるのなら、この借入れと一緒に、会社へ引き継ぐことをオススメする。中古の機械の金額と借金の残高が同じレベルだからである。
■負債はどう処理するか?
基本的に売掛金の場合と同様。
運転資金やプライベートな借金を会社へ移すことはできない。法人成りした場合、この種類の借入れは、会社から給料をとって、その中からやりくりして支払わなければダメ。会社が社長の借金を不当に肩代わりして、「役員賞与を支給した」とみなされる場合があるから、注意。
« 筏井哲治『今すぐできる「戦略思考」の教科書』講談社 | トップページ | 法人成り:その1 »
「税法」カテゴリの記事
- 木山泰嗣『教養としての「税法」入門』日本実業出版社(2022.02.28)
- 志賀櫻『タックス・オブザーバー 当局は税法を理解しているのか』エヌピー新書(2019.10.05)
- 深見浩一郎『巨大企業は税金から逃げきれるか? パナマ文書以後の国際租税回避』光文社新書(2018.09.30)
- 上田二郎『国税局査察部24時』講談社現代新書(2017.08.04)
- 大谷英暉『消費税の歴史と問題点を読み解く』幻冬舎ルネッサンス新書(2017.04.24)
コメント