伊丹敬之『よき経営者の姿』日本経済新聞出版社
世代交代をしてください。皆さんが早くお辞めになって若い世代にバトンタッチをなさるのが、日本のためになると思います。その勇気をぜひおもちください。
昭和ヒトケタ生まれのひ弱なトップが日本をダメにする。
その障害の核心は、指導者層のメンタリティにある。彼らは外的な出来事にその場その場で受け身に反応しているだけで、事態の起きる前に積極的に働きかけようとしない。つまり、指導者層に思考の深さがないのだ。
考え抜くためのもっとも重要な情報は現場にあると思ってほしい。
仕事はしてもらうんですな。
最後には、神様に聞くんです。
戦略とは一面、切ることである。
私の優良企業の定義は、「六割の人がきちんと自分の仕事を行っている企業」である。それを達成するために本当に大切なのは、現場のキーパーソンたちの考え方、ステップの踏み方、小さな動きである。「神は細部に宿る」のである。経営の本質は、その細部への経営者からの働きかけにある。
経営理念とは、組織の目的を理念として述べたものと、事業に関わる判断基準を述べたものの、二つの部分からなるだろう。
名経営者は必ず名教育者だ。
経営とは、自分が何を行うかではなく、他人を通して事をなすことだ。
凡庸な教師は、指示をする。いい教師は、説明をする。優れた教師は、範となる。偉大な教師は、内なる炎に火をつける。
経営理念を考えるということは、まさに哲学することである。企業の存在する意義、仕事の意義、そして組織の意義、それを述べたものが経営理念である。それを策定できるということは、哲学した後でなければならないはずである。
経営者の役割の第一は、人間集団の求心力の中心としてのリーダーであることである。
高くはるか遠くを見わたす志の目線と、足下を見つめる低い目線、その両方をもっている人が、よき経営者として育っていく。
大きな仕事の場には、深い悩みとぎりぎりの決断を迫る状況が生まれるだろう。その決断の経験が、「決断の要諦」をその人に学ばせる。はじめのうちは決断に失敗するかもしれない。しかし、それはそれで人を育てるいい経験になる。そして、決断はしばしば、苦渋に満ちたものになる。すべての関係者をハッピーにするような決断はほとんどありえない。その苦渋の経験が、その人に襞を刻む。
人は群れて育つ。それが戦後日本の復興期から高度成長期の社会状況だったのであろう。
環境整備のための第一の要件は、大きな仕事の場をかなり若いころから経験させるような人事配置をすることである。たとえば、小さな組織でもいいから「経営の全体」を見る経験をするような仕事の場を、かなり若い段階から経験させる。
よき経営者として育った方々を振り返ってみると、共通するのは組織の中の「考えるコア人材」としての立場を早い時期に経験していることである。
なぜ、考えるコアが不足してしまうような事態になってしまったのか。一つの大きな原因は、考える機会をあまりもたされず、かつ、たまに機会があっても考えるヒマがないからであろう。だから考える力が身につかない。だから考えなくなる。考えるヒマを作ろうとしなくなる。そのうえ、仕事が多すぎて、考えるヒマがそもそも少ない。なぜ、考えるコアを育てるように、仕事のあり方、人材の配置を考えないのか。
戦略の方向性の判断、中核人事の人選の判断、そして間接的な組織全体への影響の確保、その三点は経営者としてどうしてもしなければならないことである。
三日間くらい、寝不足続きに考えたとしても間違いのない結論を出せるようでなければ、経営者とはいえない。平常のときには問題がないが、経営者の決断場の異常事態発生のとき、年齢からくる粘りのない体での〝判断の間違い〟が企業を破滅させた例を多く知っている。
経営者には三つの役割がある。組織の求心力の中心としての「リーダー」、組織を社会に対して代表する立場としての「代表者」、マネジメントのさまざまな構造やプロセスを考える「設計者」、である。
会社の業績が良くなってくると、悪い話が耳に入ってこなくなったんです。言ったことが全部通ってしまう。これは怖いことです。それなら、もう交代しなきゃならない。こうした雰囲気は自分から早く断ち切らないと、会社が澱んでしまいますから。
株式相場の世界に、「まだはもうなり、もうはまだなり」という格言がある。
予兆を察知するためには、その予兆を経営者本人に伝えてくれるメカニズムが必要である。
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