牟田学『打つ手は無限』サンマーク出版
私の生き方は、いつでも、多くの人々と同じ方向を目指さないという視点を大切にしている。
経営は学問になった時点で、すでに遅れていることが多いからだ。
社長業は、大概すると、環境適応業である。激しい変化を正しく先見し、間違いない対応ができない社長は、事業の明日の輝かしい繁栄や、安定を築くことが難しい。
会社も、さまざまな能力の人間を採用していないと、強く生きていくことができなくなるし、他人の心がわからない特定の人間集団をつくっては、やがて衰退してしまう。いろいろな人たちが混在していて、初めてよい社会ができ上がる。
安定とは「繰り返し買ってもらうシステム」。
安定とは、自社で売っている商品やサービスが何であっても、それらを、同じお客様が、三年でも、五年でも、一〇年でも、果ては三〇年でも、五〇年でも、繰り返し買ってくれる状態をいう。
人情は紙のように薄い。
お客様が、自社の会社の商品を買ってくださる最大要因も、好き嫌いに他ならない。
感性豊かな人材は、未来開発や、商品開発や、仕掛けていくことや、すべての企画に向くと同時に、社長業で大事な方向性の決定に才能を発揮する。
子供向けの商品やサービスを扱っていたら、子供の目線に合わせて、幼い者の感性をつかんで欲しい。本当に子供の心がわからなければ、いいものは作れない。
最終決定を会議に頼ってはいけないということだ。会議というものは、公平や平均や多数を見るときに最適である。多くの会議は、画期的なことや、爆発的なことや、非常識的なことには、まったく向かない。画期的で、独創的な事業や商品を開発したいときには、多数の意見を聞くよりも、優秀な感性型の人材を選び、たった一人の人間に任せることを推したい。
現場主義こそ、最も大事な姿勢である。
競争相手が、一年も、二年も、三年も、同じ事業や商品や技術やサービスを、カタログに載せていれば、それは、大概、載せるだけの価値があるからだと判断すべきである。つまり、売れているから、利益が出ているから載せ続けているわけだ。まず、時系列でカタログを覗くべきである。・・・・・・・・多角化する場合、そうしたほうが成功の確率が高い。それは、敵の実験を診て、実証済みの証を得ているからだ。失敗が少なく、都合がよいわけである。また、時には、相乗効果があることもうかがえる。
人間の情けは、時を越えても変化することがない。文明のように、進化し、変貌することがない。不変が哲理である。これを誤解し、間違わないで欲しい。
量や規模を追求するのを「覇道」、質を追求するのを「王道」。
規模だけを追求して大きくしていくと、やがて拡大すべき市場がなくなってしまうからだ。
どんな事業でも、人口や、世帯数や、得意先の数を超えて大きくなることはできないからだ。
売上・利益を直接稼ぎ出す幹部だけではなく、総務や、経理や、組織を運営する部下に至るまで、独立創業の精神を、集中して長く持ち続けさせることこそ肝要である。
必要なのは、新しいことを弾力的に受けとめること。弾力的とは、いつでも、どんなときでも、頭を空にしておく境地に自分を置くことだ。強い固定観念や、信念に近い考え方に固執していると、他の意見に否定的になり、時には近づいてくる儲けの種まで見えなくなり、見過ごしてしまう。およそ年齢に関係なく、誰でも視点が固定していると、後ろ向きになるものだ。
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