IFRS:「アダプション」と「コンバージェンス」
日本では、EUのような、IFRSの適用(アダプション:adoption)ではなく、コンバージェンス(共通化、収斂)を選択してきました。
その結果、これまでの企業会計原則を基本とする日本の会計基準に対して、「減損会計の導入」、「リースのオンバランス化」、「工事進行基準の原則化」などの新しい会計基準を続々と制定することで、IFRSと日本基準とで異なっている項目について、個別・部分的に合わせていくことで、全体として大きな違いがないという形に持ってきたのです。
「アダプション」と「コンバージェンス」では、決定的な違いがあります。
「アダプション」は、「採用する」ということで、それまでの自国基準に替えてIFRSにするということです。ですから、自国基準がなくなるわけですから、IFRSと比較する対象(自国基準)がなくなることで、ギャップがあるとかないという話自体があり得ません。
しかし、「コンバージェンス」は、あくまで自国基準は持ち続けていて、できるだけIFRSに近づけはするものの、多かれ少なかれ、必ず違いが存在するのです。
そして、さらに問題なのは、近づけていく対象であるIFRSは、不変のものではなく、今なお成長し続けているので、「アダプション」によって、ギャップがほとんどなくなったと思っても、また差が開いたり、発生したりする可能性があるのです。
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