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2011年6月22日 (水)

ケビン・メイニー『トレードオフ』プレジデント社

経験、オーラ、個性。この三つの足し算によって上質度は決まる。

上質=経験+オーラ+個性

本書の内容を一言で言い表せば「中途半端はだめである」ということに尽きます。まさに「戦略は捨てることなり」で、成功したければ上質か、手軽か、その一方を選びなさいということです。

競争戦略の用語にstuck in the middleというものがあります。直訳すると「中途半端なところで立ち往生する」という意味ですが、差別化にも低コスト化にも不徹底である状態を指しています。ケビン・メイニーはこれを「不毛地帯」と空間的イメージで説明しました。欲張って上質と手軽を同時に目指そうとすると、この不毛地帯に陥ってしまうというわけです。

上質と手軽はセグメントごとに考えなくてはならない。年齢層、国、所得などによって、何を上質または手軽と感じるかはまったく違ってきます。

「上質とは愛されることであり、手軽とは必要とされることである」という絶妙な表現で置き換えていますが、技術が優れているとか、手間隙をかけてつくったという事実だけで「愛される」ことはないのです。

今までの日本は手軽な国でした。低価格で信頼性の高い製品をつくることで競争力を発揮していました。しかしその地位はいまや中国や韓国に奪われつつあります。たとえば自動車。韓国の現代などに「手軽」で追い上げられる一方で、ベンツ、BMW、ポルシェといったヨーロッパの高級車と「上質」で互角に戦えるだけのオーラや個性はない。私は今後の日本は明確に上質を目指すしかないと思っています。

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