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2011年7月12日 (火)

IFRS総論

■IFRSの誕生

IFRSは欧州で生まれた考え方である。したがって、IFRSには欧州のカルチャーが流れている。

■IFRIC

原則を実務で適用するためにより掘り下げた解釈指針をつくる機関、国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)が存在する。採用各国が独自で正式に解釈やガイダンスを出すことは認められておらず、解釈指針を出すことが認められているのはIFRICだけである。

■コンバージェンスとアドプション

これまではコンバージェンス、つまり、日本基準をIFRSに収斂させていく方向性が考えられていた。しかし、いまやアドプション、つまり、IFRSそのものの採用を日本企業に許容または強制することを検討する段階に突入したのである。

最終的な結論を出していないのは米国と日本だけ。米国と日本はこの動きに対して、IFRSそのものを採用するのではなく、自国基準をIFRSに歩み寄らせる、コンバージェンスという形で対応してきた。

本書において、コンバージェンスとは、自国基準を保持しながらも、一定時間をかけて自国基準とIFRSの差を縮めるよう整備していこうとする方針をいう。一方のアドプションは、本書において、①自国基準を廃止してこれに代えてIFRSそのものを自国基準として採用すること、もしくは、②自国基準は廃止しなくとも上場企業等の一部の企業にはIFRSの適用を強制していこうとする方針をいう。

EUはアドプションという形で、EU域内の上場企業の財務諸表にIFRSを強制適用した。

欧州では非上場企業にはIFRSの適用が強制されていない。

■ルール主義と原則主義

米国基準、日本基準は「ルール主義」、IFRSは「原則主義」。

ルール主義は、細かい規則や数値基準を定め、そのルールを厳しく遵守させるという考え方である。一方、原則主義は、会計基準の概念を整理して原理原則だけを示し、詳細なルールは示さないという考え方である。

原則主義では、同じ取引であっても会計上の判断により会計処理に相違が生じる場合があるかもしれないが、その相違の結果がある程度の範囲に収まるならばよしとしようと考える。逆に、細則により決められた細かい針の穴に糸を通すような会計判断を求めることはせず、原則的な考え方を示し、企業は取引の会計実態を表す会計処理を行うことができる、少し幅をもたせた考え方である。

原則主義に基づく財務諸表を利用する場合には、通常単年度だけで判断することはなく、複数年の動きを見ることになる。

小異を捨てて大同につき多くの国が参加できるようIFRSをつくり上げた、欧州の知恵があったといえるだろう。

■IFRSの基本原則

IFRSでベースになっている考え方は、「原則主義」「貸借対照表に重点を置く」「公正価値会計」の3つである。

■収益認識

IFRSでは「リスクと便益が買い手に移転したときに収益を認識」するため、出荷時点では収益を認識できない可能性がある。

■リース会計

IFRSでは、数値基準はなく、「実質的にリスクと便益が移転する場合」、すなわち企業が法的形式にかかわらずリース契約に基づく資産そのものを実際に自社所有の他の有形固定資産と同様に使用しているのであれば、リース資産として貸借対照表に計上することになる。

■研究開発費

IFRSでは、「研究費」と「開発費」を分けて定義し、「研究費」はすべて費用処理する。一方、「開発費」については特定の条件を満たした場合に資産計上するものとしている。

実際には「開発費」として資産計上が行われる特定の条件の中に「いかに可能性の高い将来の経済的便益を生み出すか」といった内容があり、販売の見通しが明らかにならなければ資産計上はされない。

■のれん

IFRSにおいては、現在の米国基準と同様に、のれんは減損会計の対象となっているということである。

IFRSにおいては負ののれんは一括で収益計上される。

高浦英夫監修『IFRS 国際会計基準で企業経営はこう変わる』東洋経済新報社

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