ジョン・P・コッター『リーダーシップ論』ダイヤモンド社
成果に結びつく変革はたいてい、次の八段階の複雑なプロセスを経ている。
- 危機感を醸成する
- 変革プロセスを主導できるだけの強力なチームをつくる
- ふさわしいビジョンを構築する
- 構築したビジョンを組織内に伝達する
- 社員がビジョン実現に向けて行動するように、エンパワーメントを実施する
- 信頼を勝ち取り、批判を鎮めるために、短期間に十分な成果を上げる
- 活動に弾みをつけ、その余勢を駆って、変革を成し遂げるうえでのより困難な課題に挑む
- 新しい行動様式を組織文化の一部として根づかせる
マネジメントの基本目的は、現在のシステムをうまく機能させ続けることである。これに対してリーダーシップが目指すのは、そもそも組織をよりよくするための変革、とりわけ大変革を推進することである。
夢ならぬ現実の世界においては、できるエグゼクティブは、ほとんどの時間を誰か(しかも自分の部下とは限らない誰か)と話して過ごしている。話題は自分の職能分野にとどまらず、さまざまな分野に及ぶ。そして、命令を出すよりは、あれこれと質問することのほうがずっと多い。「重要な」意思決定をすることは、実は非常にまれであり、周囲の人々との絆を強めるために世間話をしたり冗談を言い合っている。彼らのそうした姿は大変気楽そうで、仕事らしい仕事をしていないように映ることも多いのだが、実のところ彼らは目を見張るほど有能で、多岐にわたる仕事(リーダーシップとマネジメントの両方)を瞬く間に片付けてしまう。
私が知るベスト・カンパニーは、マネジメントとリーダーシップの違いを明確に理解しようと努めてきたか、あるいは、当世きってのロールモデルをトップに戴く幸運に恵まれているかのどちらかだ。
変革への準備ができている組織というのは、大きな変革プログラムが始動するときだけではなく、どんなときでも危機感を高め、慢心を避けようと努力するようになるに違いない。こうした組織はチームワークを重視するため、必要とあればすぐに変革の推進に向けて組織を統合することができる。それだけではなく、あらゆる階層が常にビジョンを抱き、必要に応じてその内容を修正し、多くの人に絶えず伝達する。そこで働く社員は、新しい目標に挑むように、いつでも権限を与えられている。このような組織であれば、いまの時点で五年かかっている変革も一、二年で達成できるかもしれない。そうすれば急速に変化する競争環境に取り残されずにすむ。
リーダーシップのみが突出してマネジメントが手薄になってしまうのは、逆の場合と同様に困ったこと、あるいはいっそう手に負えない、ということだ。優れたリーダーシップとマネジメント力をともに備え、なおかつこの両者をうまくバランスさせられるかどうかに真価がかかっている。
マネジメントは複雑さに対処し、リーダーシップは変革を推し進めるというそれぞれの役割から、両者の違いが明確になってくる。マネジメントとリーダーシップにはともに、①課題の特定、②課題達成を可能にする人的ネットワークの構築、③実際に課題を達成させる、という共通する三つの仕事があるのだが、そのために用いる具体的手法にこそ、両者の違いがある。
「コントロール」こそがマネジメントの本質だからだ。
未開拓の領域に踏み込むよりも、現状を維持することのほうが危険は多い。
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