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2011年11月 9日 (水)

堀内智彦『実践!原価管理-事例でわかるコストマネジメントのツボ!』秀和システム

「この著者の新著が出るのが楽しみだ」ということが、誰しもあると思う。私の場合、その中の一人が本書の堀内先生だ。今、原価計算・原価管理を書かせて誰が一番面白いか、役立つか。それは堀内先生なのである。

本書の題名は、『原価管理-事例でわかるコストマネジメントのツボ!』となっている。『コストマネジメント-事例でわかる原価管理のツボ!』としなかったところが、すごく好きだ。

本書は字が大きくて、とても読みやすい。だからといって侮るなかれ。内容は薄いんじゃないの?と思う読者は甘い、甘すぎる。書店にあるあまたの分厚い原価管理本の要諦をさらに凝縮したのが本書なのである。無駄なページは一切ない。私は全ページに線を引っぱった。読者は、この一冊で〝原価管理〟を確実にマスターするんだという意気込みで読んで欲しい。じゃないと、太刀打ちできない。

私はこの先生の〝まえがき〟が好きだ。本書でも早速次のような面白いことを述べている。このようなことを述べた先生は、私の知るかぎり一人もいない。

「究極のコストダウンとは○○を上げること」ということです。何故ならば、原価率とは「原価÷○○」で算定されるからです。

○○の部分は本書を見ていただきたい。会計をわかっている人なら、当然わかるはずだ。そして、

「単なる値上げによる増収が望めない現在では、どうすればいいのか?」という点にも言及しており、といったように、読者は謎解きのように本書を読み進めることができる。

本書の特筆すべき点は、まず、本書は原価管理の本であり、原価計算の本であり、生産管理の本であり、マネジメントの本であり・・・・・・・それらを総合したトータル・コストマネジメントの本といえる。いうまでもなく、原価管理の勉強は原価計算の知識だけでは不足だ。財務会計の知識もいるし、生産管理の知識もいるし、経営学の知識もいる。その点で、本書はあらゆる学問領域を融合させた学際実務本といえるだろう。著者自身、私が認める?マルチプレーヤーコンサルタントで、その実力はお墨付きである。

次に、興味深い事例(問題)がふんだんに取り入れられていることだ。使える手法が、たんまりある。アカデミックな本は現実性がない単純モデルで、私の場合ただの数値計算に終始した思い出がある。しかし、本書の事例は現実的で、イメージが沸いてくるのである。さらに数値計算だけではなく、その改善方法も取り上げられているため、効果抜群である。読者も事例をもとに、自社の数値を当てはめてみることを薦める。そして、原価改善に役立てて欲しい。なお、当然のことだが、事例については読者はすぐに解答例を見るのではなく、本書の説明を参考にしながら、まず自分で考えてみることを薦める。

最後に、著者の全著書に共通することだが参考文献がないことだ。これは著者が自分の頭と経験で書いている証拠だ。わけのわからない横文字などもない。それに私はGEとか京セラとか、トヨタ・ホンダとか、パナソニックを出してきたら、その時点で著者を疑う。

本書の流れは、

  1. まず原価管理について、しっかり説明した上で、原価計算についての概略を述べている。
  2. 管理会計の重要な論点である損益分岐点分析について丁寧な説明をし、次いで著者考案の「マネジメント・ナビゲーション」について図表を用いて説明している。
  3. 原価管理の王様である標準原価計算について、差異分析の基本からさらに踏み込んだ原価差異の改善の考え方について説明している。
  4. 原価管理の対象をどうやって設定するのか、その絞込みについて解説している。著者考案の「マネジメント・ウエッブ」や多くの事例がその理解を助ける。
  5. 最後に各論として、変動費のコストダウン、固定費のうち管理可能費のコストダウン、管理不能費のコストマネジメントについて論じられている。

では、各章ごとの論点を要約していこう。

第1章 これだけは知っておきたい! 原価管理の基礎知識

原価管理=原価+管理、と定義しており、そのうち管理は「コントロール」と「マネジメント」の2つの意味があるとしている。「コントロール」と「マネジメント」についての説明がしっかりなされており、さらに、それらとマネジメントサイクル(PLAN→DO→CHECK→ACTION)との関係が言及されている。

原価低減の2種類の説明と、管理可能費の削減問題について議論がなされている。

原価計算と原価管理との関係、原価と総費用の違い、限界利益、付加価値といった重要な概念が説明されている。特に、“限界利益思考”の大切さを、事例を用いて述べている。

原価計算の目的について整理されており、そのうち価格決定目的として「原価積上方式」と「売価逆算方式」について説明がなされている。

意思決定会計のうち、受注引受け可否問題についての事例が取り上げられている。この事例は非常に重要である。

第2章 原価管理のための「管理会計」とは?

財務会計と管理会計の違いについて、説明がなされている。財務会計の決算書が利益管理に使えないのも、理解していただきたい。

全部原価計算のデメリットについて、言及されている。

【図2-1-2:財務会計と管理会計における原価構造の相違】は、必見!

損益分析点分析について、算式を用いたロジックで理解を助けている。

収益構造の相違について、事例を用いて、3つのパターンを解説している。

損益分岐点引下げのための方策を具体的項目を用いて説明している。

コストマネジメントにおける月次管理項目について、表を用いて説明している。これは貴重。

著者考案の「マネジメント・ナビゲーション」について言及されている。これは、月次経営指標のことで、損益と生産性、キャッシュフローが一覧で比較対照できるシートである。これは使える。特に、生産性の部があるのがいい。生産性の内容もしっかり説明されているので、要チェック。

第3章 原価管理のための「標準原価計算」とは?

標準原価の代表的種類である理想標準原価と現実的標準原価について説明している。

安易な値下げによる問題点について、原価計画の重要性の観点から、事例を用いて説明している。いい事例。

標準原価計算の差異分析の基本の説明、特に、難解な製造間接費差異の説明がいい。

材料費・労務費・製造間接費の各原価差異改善の考え方についての具体例が、理解を助ける。

第4章 原価管理の対象をどうやって設定するのか?

原価計算における原価把握のステップ、コストマネジメントにおける二方向からのアプローチ、コストマネジメントの管理対象が説明されている。

マネジメント・プロセスチャートの役割やチャート上でチェックすべきボトルネックが解説されている。

そして著者が考案した強力兵器「マネジメント・ウエッブ」というチャートの登場である。このチャートの意義、利点が述べられ、さらに、このチャートによる売上高・変動費・固定費の展開説明がなされている。ところで、このチャートは怪しいおっさんが考えたマインドマップなるものに似ている。しかし、読者はマインドマップで自分探しなどをしている暇はない。今すぐ、自社の「マネジメント・ウエッブ」を作って自社の売上やコストを分析してみよう。

第5章 「変動費」のコストダウンとは?

外注と購買の違い、棚卸の重要性、在庫管理における問題について述べられている。在庫をめぐる論点として、定量発注方式と定期発注方式の説明がなされている。

5S・8S活動について述べられている。

売上原価のコストマネジメント・外注費のコストマネジメントについて、詳細に述べられている。特に、外注費の説明は必見。

第6章 「管理可能費」のコストダウンとは?

固定費の引き下げ、固定費の変動費化による効果を、利益図表と事例を用いて説明がなされている。

人件費・物件費、管理可能費・管理不能費をもとにした固定費の分類表は必見。

付加価値や人件費との関連から算出される人件費投資効率や労働生産性の意味合いについて詳しい説明がなされている。

測定が困難な固定費の費用対効果を、3つの事例でもって不可能を可能にしている。

環境マネジメントシステムの考え方についてもふれられている。

第7章 「管理不能費」のコストマネジメント

コストカットとコストダウンの目的と考え方、固定費のコストマネジメントの考え方について述べられている。

稼働率の定義、不適合の原因分析のための4M手法、平均とばらつきの違い、IEの1つであるワークサンプリング、これらの生産管理で重要な手法の説明も秀逸。

物件費と稼働率との関係、人件費と稼働率との関係を事例でもって、詳しく説明されている。仕事の価値分析-WOEM分析についても説明。

まとめとして、究極のコストダウンとは「売上=○○を上げる」ことだとしている。

以上のように、本書は論点豊富で、見所満載である。ちょっと今回のブログはハイライトを書きすぎちゃったかなという感があるほどボリューム満天だった。今回のブログは、本書の重要部分の引用ではなく、あえて読者の好奇心をそそるような書き方をした。私は読んでいて、最後にはだんだん残りのページが少なくなるのが惜しいくらいになった。著者が渾身の力を振り絞って書いたと言っていたが、まさにその通りである。

最後に本書の欠点を述べておこう。ない。まじで。ただ一つ危惧するのは、本書を忠実に実践すれば、私の仕事がなくなるという危険性だ(まじで)。

かの大哲学者ヴィトゲンシュタインが『論理哲学論考』において、こう言った、“本書に表わされた思想が真理であることは侵しがたく決定的であると思われる。それゆえ私は、問題はその本質において最終的に解決されたと考えている”。そこで、私はこう言いかえる、“本書に表わされた原価管理の理論が真理であることは侵しがたく決定的であると思われる。それゆえ私は、原価管理の問題はその本質において最終的に解決されたと考えている”。だが、先生は人件費に関する本も準備中だという。まだまだ終わらない。

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コメント

先生、こんにちはヽ(´▽`)/

今回の著作もボリュームたっぷりです。ナイスです。

書評がちょびっと遅れちゃいました。私のカネがないのと、あと私ヘタレ
なんで他人の書評を参考にしないと、コワイんです(。>0<。)

ところで、なんですって!!! 〝初速がいまいち〟ですって。原因は
彗星が地球にぶつかる可能性があるからなのかい w(゚o゚)w

まぁ、これからいろいろな媒体で取り上げられるはずなので、売れてくる
のは間違いないでしょう。

コリンちゃんさん!ご無沙汰しております!!

またまた、貴重なお小遣いを使ってのお買い上げ、そして、毎度の懇切丁寧かつボリュームたっぷりの「最大級の書評」をいただきまして、まことにありがとうございます!

実は自分の本が出て、初めて書店に陳列されるのを見るときにドキドキするわけなのですが、コリンちゃんさんの書評を頂くまでがさらにドキドキ、怖々なんです
(A;´・ω・)アセアセ

本当に初速がよくなくて「もしかして頓珍漢な本を出してしまったのか?」と落ち込んでいました(汗)。

何しろコリンちゃんさんは、多読派で博識で、読解力と文章力に長けていて、特にビジネス系や会計学などに通じていらっしゃるし、舌鋒鋭く「是々非々の書評」をされる方なので、そういった言わば「プロの読者の方」に通用するか?
どうかのガイドライン(失礼)として、まさに恐々としていました。

本当にありがとうございます。
アマゾンで5つ★の提灯レビューを100個?もうらうより、うれしいです!
o(*^▽^*)o

少しでも多くの方に手に取っていただきたいのでまた、拙ブログにて引用させていただきます。今後とも精進してまいりますのでよろしくお願いします。

ホリコンこと堀内智彦

先生!こんにちは(◎´∀`)ノ
お忙しいところ、コメントをいただきサンクスです。
私のつたない文章に褒めの言葉をいただき、涙してます(u_u。)
私の性格は超ワルなので、本の粗を探そう、探そうと思っていたの
ですが今回も完敗です。

今回の著作は使えるところが満載ですね。私は使える本しか
買わない。特に図表は秀逸なものが多く、大きくコピーして部屋に
貼っておこうとも考えます。また、仕事の場で資料として使おうとも
思っています。もちろん出典を出します。宣伝します。買わせます。

今回、書評を書くにあたって、他の方の書評をネットでいろいろ調べた
のですが、なかなかありませんね。一体全体みんな何やってんだ(`Д´)
私は生産管理や工場経営の雑誌や新聞に疎いのですが、これから
どんどこ紹介されるはずです。会計の雑誌でも紹介されるといいんだけ
どなぁ~。自分とこの学生しか買わないような本を紹介しても売れね~
だろ(*`ε´*)ノ

またこれからネットとかで書評が出てくると思いますので、私の気づかな
かった点などを勉強してみようと思います。今回の著作の研究はまだまだ
これからです。

それでは失礼いたします。

コリンちゃんさん!
お疲れ様です。

お忙しいのに本当にありがとうございます。

そうなんですよ~。書評(良いとか悪いとか)がないので、やはりスベッている?本かな
?とか心配してたんです。
(ρ_;)

まあ単に売れていないから書評もでないのかな?と(ならば納得)

そして先行宣伝で恐縮ですが、来年2月出版予定の人件費の本は結構面白くなるはずです
(基本書ではなく、密かにベストセラーを狙っているため、多少の演出もありますが)。

私は、過分にお褒めいただいたように、中小企業専門の現場改善コンサルなので、オールラウンドプレイヤー(ワンストップコンサルティング)にならざるをえないのですが、

執筆に関しては、管理会計や生産管理、人事管理などに加えて、目標管理、税務、IT、監査など、とっても苦手なセールス・マーケティング以外は制覇したいと密かに企んでいます。
さらに経済小説系など(゚▽゚*)

コリンちゃんさんには大変お世話になっています。

いつの日か、リアルでお目にかかれることを願っています。
もしお時間があるときに、私の講演会やセミナーなど参加可能であったら、講師権限でご招待しますので、どうぞよろしくお願いします。

本当にありがとうございます。
ホリコンこと堀内智彦


先生(○`・ェ・)ノ【こ】【ん】【に】【ち】【ゎ】
返信コメント毎度ありがとうございます。

>そして先行宣伝で恐縮ですが、来年2月出版予定の人件費の本は結構面白くなるはずです(基本書ではなく、密かにベストセラーを狙っているため、多少の演出もありますが)。さらに経済小説系など(゚▽゚*)

いくらいい本でも専門書は市場が限られてますからね。ぜひとも、次回作で名を広めて
埋蔵金や原価計算本の価値を知らしめてほしいところです。次回作も強烈なインパクトの
あるものを期待してますよ。経済小説系も先生の場合、けっこういけると思いますよ。
現場のドロドロ戦争物なんか期待しちゃいます。そのときは、高杉良さんの小説に必ず
あるエロもよろしくお願いします(・∀・)ニヤニヤ

>いつの日か、リアルでお目にかかれることを願っています。もしお時間があるときに、私の講演会やセミナーなど参加可能であったら、講師権限でご招待しますので、どうぞよろしくお願いします。

ありがとうごぜーやす。早く先生に会えるような御仁になれるよう、努力いたします。
セミナーは本当に行ってみたいですね。実際の著者からじかに聞くと、本の理解力・
おもしろさも全然違ってきますからね。いつか必ず狙ってますよ( ̄ー ̄)ニヤリ

それでは!!!

コリンちゃんさん!

こんばんは(*゚▽゚)ノ

この絶賛!!と言ってよい書評を何回も読ませていただいて、
一人悦に入っています(≧∇≦)

著者としてこれ以上の幸福はありません。
まさに著者冥利につきます。
努力が報われたという感じです。

来年2月の次回作も魂込めてますので、是非粗捜し^^をお願いします。

本当にありがとうございます。
堀内智彦

( ´_ゝ`)ノボンジュール♪堀内先生

たびたびのコメント感謝です( ^ω^ )

著作に関して私のほうで質問等がありましたら、先生の
ブログに寄らせていただきますので、そのときはよろしく
お願いいたします。

それでは(◎´∀`)ノ

コリンちゃんさん!
あけおめことよろです。(゚▽゚*)
相変わらずの多読博識ぶりには敬意を表します。
このブログもちょくちょく引用させていただいてます。
さて、ようやく新著がでました。機会がありましたらよろしくお願いいたします。
ホリコン

先生、こんちわ(◎´∀`)ノ  お元気ですか。

新著出ましたね。いつもの金繰りのことで恥ずかしながら
購入してませんが(u_u。)、表紙と帯を見る限り、やばいです、
やばいです、先生が新宿二丁目に出入りしている以上にやば
いです。これは世のリーマンに喧嘩を売ってるんじゃないです
かねヽ( )`ε´( )ノ。これは買わせていただき、書評書かせて
いただきますよ(`ε´)。ちょっと時間がかかりますが、気合を
いれて書かかせていただきますよ(*`ε´*)ノ。

さてさて。〝You Tube〟の動画を見ましたが、先生いい声して
ますw(゚o゚)w。ぜひとも、先生の十八番をお教えください。てか、
先生って、正統派コンサルタントなのね。あんまり、はじけちゃって
るコンサルは、ちょっとあやしいので( ゚д゚)ポカーン。

いずれにせよ、今回の新著は敵対心をもって、読ませていただき
ますよ(・∀・)ニヤニヤ。また、ご登場願いますよ。それでは。

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