7Sを考える
組織の7S・・・7つのSは相互に関連し、互いに影響しながら全体として組織の機能の良し悪し、性格を決定する。意思決定、コミュニケーション、個人、組織相互の関係の仕方など
7Sは、結果として組織がうまく機能するための要件を、より広い視野から探るための考え方の枠組みである。戦略の実施が人(Stuff)によってなされる以上、組織とシステムだけでは律しきれない人の持つ技術(Skill)、仕事の進め方や組織風土(Style)、さらに価値観(Shared Value)等の要素が整わなければ、よい結果は生まれない。
実は、組織の7Sのうち七つ目のSは、当初はShared Value(共有の価値)といわず、Superordinate Goal(究極の目的)という言葉が一般的であった。機能組織(ゲゼルシャフト)である以上、組織が実現したい目標があり、そのために構成員が価値観を共有して活動することによって、はじめて活性が保たれ成果が上がるからである。
■ハード3S・・・意思と力で決定が可能
ドイツの社会学者テンニースは『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』の中で、産業革命以降の近代社会においては、血縁、地縁、精神(宗教など)の同一に基づく自然発生的、有機的、持続的なゲマインシャフト(共同社会)に対して、人為的、機械的、一時的な結合であるゲゼルシャフト(機能社会あるいは利益社会)が優位に立ち、そこでは権力、契約、承認、ルール等のメカニズムが、自然発生的な愛情などの動機に優先するという意味のことを述べている。
我々は、戦略と組織を論じるとき、無意識のうちにこのゲゼルシャフトを前提として、議論を進めがちである。ゲゼルシャフトは、特定の目的のために人為的に構成された人の集団である。そこには、何を、どのように実行するかの基本目的と戦略(Strategy)があり、その戦略を実施するために必要な組織(Stracture)が構成される。そして組織を運営するために必要な運営制度(System)-例えば稟議などの意思決定や伝達のルール、評価制度、予算制度など-が作られる。この三つは、意思と力があれば揃えることができるもので、「ハード3S」と呼ばれる。
形式的には、このハード3Sを備えれば、あとは資金と人を手当てするだけで戦略実施の準備ができたと考えるのが普通である。
しかし、実はこれでは不十分である。
■ソフト4S・・・短期間で力による変更は難しい。正しい方向づけと、注意深いケアと運営が必要
ハード3Sだけでは、事業のお膳立てができたと言えない。
ソフト4Sは、必ずしも意図して作られるものではなく、与えられた環境に合わせて、すでに現有の事業と組織の中に定着している場合が多い。したがって、新しい事業を始めようとか、新しい環境に合わせて新たなる基本的方向づけのもとに、新しい戦略を展開しようという場合には、従来の環境に適合し、定着していた七つのSを根本的に見直して、新しいバランスに作り替えていく必要がある。
そのための工夫は、新たな目標・戦略と現状のギャップにより、ケース・バイ・ケースであるが、いずれにしても、ハード3Sだけでなく、現状のソフト4Sから新しい4Sへと移行していくための、メリハリのきいた打ち手が必要である。
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