EVAとEVAスプレッド
■EVA(Economic Value Added:経済付加価値)
EVA=税引営業利益-資本コスト
=税引営業利益-(投下資本×加重平均資本コスト)
EVAは、ある期の利益が必要利益水準をどれだけ上回ったかを示す指標であり、金額で表されます。
日本企業の場合、余裕資金を多くもっていて、受取利息・配当金が多い企業もあるので、営業利益に受取利息・配当金を加えて事業利益を求めて、それに「1-法人税率」を掛けて税引事業利益を計算することも多い。
・EVA賛成論
EVAは、業績を測るための指標として利益や利益の成長より明らかに優れている。
EVAは、幹部に1つのメッセージを送る。つまり、資本コストを賄うのに十分な利益の増加がある場合にのみ投資するということである。
・EVA反対論
EVAは、現在価値を計測せず、当期あるいは翌期の利益に依存している。したがって、手早く回収できるプロジェクトを追求することを奨励し、懐妊期間の長いプロジェクトに厳しくなる傾向がある。
EVAの計測方法は、経済上の利益と投資の正確な計測が得られるのかどうかに依存する。EVAを効果的に適用するには、損益計算書と貸借対照表の大きな変更が必要である。
・企業へのEVAの適用
EVAの最も重要な使用方法は、企業内において業績を計測し、それに対し報酬を与えることである。
・EVAを高めるには
- 営業利益を高める
- 投下資本を減らす
- 加重平均資本コストを下げる
1と2はしばしば両立しないことがある。このため、営業利益と投下資本を別々にとらえるのではなく、むしろ次のEVAの算式に従って、ある施策が資本コストを上回る投下資本利益率をもたらすか否かを判断の基準にすべきであろう。
EVA=投下資本×(投下資本利益率×加重平均資本コスト)
この式をもとに考えると、企業がEVAを改善する方法として、次の4つをあげることができる。
- 追加の資本投下を行わずに営業利益を増加させる(既存事業の投下資本利益率を高める)
- 追加投資を行う場合は、投下資本利益率が資本コストを上回る投資のみを行う
- 資本コストを上回る投下資本利益率を確保できない事業から撤退する
- 投下資本利益率が資本コストを上回る事業を見つけられない場合には、余剰資金を用いて負債を返済したり、自社株買いや配当による株主への配分を行う
・EVAがマイナスであることによる問題点
- 株価と資金調達力に与える影響である。資本コストとは株価を維持するために必要とされる収益率であり、EVAがマイナスであることは企業がそのような水準の利益を生んでいないことを意味する。したがって、マイナスのEVAを続ける企業は、株価やMVAが低下することになるのである。
- 企業の競争力の喪失である。資本コストは、本来その企業が行っている事業のリスクに応じて決定されるものなので、EVAがマイナスであることは、その企業が十分な競争力をもっていないことを意味する。したがって、EVAがマイナスであるにもかかわらず、収益体質の改善が行われなければ、やがてその企業は業界内で地位を低下させることになろう。それは市場シェアの低下という形で表れるかもしれないし、コスト競争力の低下による利益水準の低下という形で表れるかもしれない。
■EVAスプレッド
EVAスプレッド=(税引営業利益/投下資本=投下資本利益率)-加重平均資本コスト
=〔税引営業利益-(投下資本×加重平均資本コスト)=EVA〕/投下資本
=EVA/投下資本
EVAスプレッドは、投下資本利益率が加重平均資本コストをどれだけ上回ったかを示しており、パーセントで表示されます。
EVAスプレッドは、投下資本利益率と加重平均資本コストの差であり、EVAスプレッドがプラスであれば、企業は価値を生んだことになる。EVAスプレッドはEVAを投下資本で割った値になるので、EVAがプラスであればEVAスプレッドもプラスになる。
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