自社株買いとEPS・ROE
自社株買いは一株当たり利益(EPS)や株主資本利益率(ROE)を高めるので株価にプラスになると書いてある新聞記事を時々見かけることがある。この議論は正しいだろうか。この議論は二つの部分に分けてとらえることができる。
第一は、自社株買いはEPSやROEを高めるという部分であり、第二はEPSやROEが高まれば株価にプラスになるという部分である。これは両方とも正しいように思われるが、厳密にいうと両方の部分とも必ずしも正しくない。
まず、ROE。自社株買いによって、ROEが高まるためには、企業の総資本事業利益率が借入利子率(または運用利子率)よりも高いことが必要である。自社株買いによってROEが高まるためには金利以上のリターンを事業から上げているという条件が必要といえるのである。
次に、EPS。自社株買いを行ってEPSが高まるには、株価収益率(PER)が税引後利子率の逆数よりも低いことが必要である。自社株買いを行えばPERが変化する可能性があるので、EPSが上昇するから株価が高まるとはいえないのである。
自社株買いによってROEやEPSが高まると株価にプラスになるという議論は理論的には正しくない。
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