利益マネジメントの方法
■利益マネジメントの3つのパターン
1.機会主義的選択
会計上の見積りと判断等を通じて利益を裁量的に計上できる限り、経営者は、たとえ利害関係者の犠牲になることがわかっている場合でも、自己の富を増進させるような意図的な会計方法を採択する可能性がある。
2.効率的選択
利益マネジメントはいつも悪意に満ちているとは限らない。
経営者は企業価値を高める行動を志向し、政府の規制から受ける潜在的コストを最小にしたり、大株主やメインバンクとの関係を良好にしたりする会計上の効率的な選択を試みることがある。
3.情報提供的選択
利益マネジメントによって財務諸表の予測能力を向上させるような情報提供的選択が行われる見込みもある。経営者と利害関係者の情報の非対称性を解消するような利益マネジメントは、企業外部者に内部情報を伝達するコミュニケーション手段として役立つ。
■会計利益を増減させる方法
1.会計的裁量行動
棚卸資産の評価方法の選択・変更や減価償却方法の選択・変更といったものだけでなく、貸倒率や返品率の見積りの選択・変更や耐用年数の見直しなどにも及ぶ。
2.実体的裁量行動
経営者は、期末の出荷延期や押込み販売を行ったり、研究開発費や宣伝広告費に対する支出を早めたり遅らせたり、有価証券や固定資産の売却時期を選択したりする。
3.表示上の分類的操作
損益計算書の作成において、もしある項目を別の場所に移し替えることができるならば、見かけ上、最終段階に至るまでの利益が増加・減少する。そこに至るまでの計算過程の要素に経営者の裁量が加えられるので、情報利用者には見分けにくい方法といえよう。
■利益マネジメントの方向性
- 利益捻出型
- 利益圧縮型
- 利益平準化型・・・おそらく企業で実施される最もポピュラーな利益調整手段であろう。
■会計発生高の算定
税引後利益=営業CF+会計発生高
会計発生高=非裁量的発生高+裁量的発生高
実証会計研究では、直接に裁量的発生高を求めるのではなく、先に非裁量的発生高を推定する。
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