一倉定『社長の姿勢』産能大
事業はお客様あって初めて存在する。お客様がなければ事業そのものが存在しないのだ。我社の事情はいっさい無視して、ただひたすらお客様のためにサービスをするのだ。
商品のことを一番よく知っているのはエンドユーザーである。
経営学と称する経営学にあらざる学問をみれば分かる。あれはまさに〝自らの欲望〟の固まりである。その証拠に、マネジメントの理論には、〝お客様〟という言葉さえほとんどない。すべて、〝我社〟である。我社の都合だけが繰り返し強調されているだけである。
品質とサービスはいつも、そしていつまでも忘れないのがお客様なのである。
お客様に過去の実績はいっさい通用しない。
お客様は会社に対して何も言ってくれないのである。その会社の商品やサービスが自分に気に入らなければ、買わないだけである。
クレームというのは「お前の会社でこんなことをしているとお客様に見放されるぞ」という警告を与えてくれる、こよなく有難いものなのである。
会社というものは、社長で99%決まってしまうのである。
アメリカ式の近代建築というものは、設計者のひとりよがりで、全くの邪道に陥ってしまっている。(映画『摩天楼』)。
アホ、売れないことを前提にして物を考えるやつがあるか。
ただただ一貫して生産性の向上だけを指向してきたのである。過当競争のために価格競争に勝ち抜くには、生産性向上が第一だということなのだ。これが誤っているのだ。
おしぼりサービスは日本人が発明した。
客様がテーブルについてから30秒以内におひやとおしぼりをもって注文とりをすること、ビールや水割りは注文を受けた1分以内に、酒は2分以内に、必ず突き出しをつけて出すこと、をうるさく言っている。
値上り益というのは、自らの努力ではなくて相場による儲けである。アブク銭や一時的な儲けをのがしても正しい態度を貫くことこそ絶対に大切なのである。経営者は投機家や物件屋ではないのだ。
小売店の生きる道は生鮮三品(青果、鮮魚、精肉)と惣菜である。この四つは中型店以上は苦手なのである。
クレームのアンケートは統計をとるためにお客様にお願いするのでなくて、クレームをすぐ処置するためにとるのだ。
初めから具合の悪い時計は、いくら修理してもダメ。
社長の正しい姿勢とは、いうまでもなく、お客様第一である。
マネジメントを説いた本に〝お客様〟なる思想どころか、言葉さえないではないか。
第一には、社長が自ら姿勢を正すことである。いうまでもなく、お客様第一の姿勢である。第二には、お客様第一の思想と、これを具体的にどう行なえばよいかについて、方針書をつくるのである。お客様サービスは面倒くさく、能率が悪く、時間がかかるものである。第三には、方針書やマニュアルは、よくよく管理者に説明して徹底を計る。そして定期的な抜取り監査をやり、試験をして、これを昇進昇級の査定に使うのである。
私はトンチンカン社長の言うことはいっさい相手にしないことにしている。アホらしくて相手などできないからだ。
我社の売上高しか見ていない危険がここにある。我社の売上は上がっておっても、競合他社がこれ以上伸びておれば、市場占有率は下るのである。「対前年売上高伸び率」という考え方は、全くの誤りである。比較しなくてはならないのは、競合他社との伸び率である。
どうして売上を伸ばしていいか分からぬ社長に対する私の提言は、社長自らお客様のところを回って、お客様に教えてもらうことだ。
打ちとけて話をするには、何回も訪問して親しくならなければならない。お互いに少しホグレ始めるのが三回目くらいなのである。
販売戦というものは、冷徹な市場原理に従わなければ勝ち目はないのである。
奨励金制度なるものは、それがどのようなものであれ、事業経営においては絶対にとり入れてはならないということである。奨励金制度をとった瞬間から、社員は奨励金に合わせて行動する。
人材を殺して使っているケースは決して少なくはない。
事業の「事」の字も知らない輩がつくりあげたマネジメントの理論など、百害あって一利ないのである。
情報というやつは〝裏〟がとれていない場合の信頼度は極めて低いのである。
クレームの責任を追及するから、社員は社長に報告せずに、もみ消そうとするのだ。
社員が疲れてノビてしまうことさえ分からぬ思いやりのないボンクラ社長といわれても、いたし方がないであろう。社員にハッパをかけること自体、私に言わせたら、社長として誤りである。
社長の叱言は、「すいません、気をつけます」ですむけれども、先輩社員の叱言は恐ろしいのである。悪くすると〝村八分〟の浮き目を見なければならないのである。だから、社員の不手際や誤りは、上司に対して隠すという不文律が、どこの会社にもある。これを知らなければ社長はつとまらないのである。
社長の役割は、あくまでも事業の経営であり、そのために必要なことは、まず何よりもお客様のところへ行くことである。そこから得られたお客様の要求と、競合他社の動きから、我社の方向づけをすることであり、目標を設定することであり、方針を決定することなのである。
新商品というものは、最初の販売時には、少量作るものである。
お客様のところへ行けば、競合他社の動きも同時に分かるものなのである。
社長が本当に必要とする情報は、外部の情報なのである。しかし、社長が見る書類のほとんど全部は、社内の情報だからである。
社長の会社訪問は、社員と同行、あるいは道案内をさせるのはよいが、相手と会う時は、こちらは必ず社長だけにしなければならない。社員を同席させると、相手は本当のことを言わない。特に、批判は絶対にしてくれない。それは、同席する他社の社員を批判することになるからだ。
何もかも揃えるから、何もかも揃っていないのである。
お客様は「見くらべて買う」という買い方をするのだ。
小規模会社が大手に勝つためには、品種を思いきって絞り、その中で品目を大手より多くすることである。
蛇口作戦(小売店、工事業者などの末端業者に定期的訪問を行うこと)
「お客様を満足させる品揃え」という正しい態度を持っていれば、自社製だろうと、仕入品だろうと、全く区別はないのである。自社商品だけが可愛いと思っているうちは、お客様の満足は得られない。
お客様にウソをつく会社はつぶれるからです。
商品として不完全であれば、これを完全なものに近づけるのが〝技術者〟というものである。
いくら分析しても絶対に分からないことがあります。それは、アイスクリームに込めた私の〝心〟です。
一万台に一台の不良でも、お客様にとっては一〇〇%の不良である。
ドイツ人には、〝いい品質〟というのは特別なことではなくて、当り前のことなのである。
社長が社員批判するのは誤りである。社員が悪いのではなくて社長が悪いのだ。社長が姿勢を正せば、社員は黙っていても社長を見習って姿勢を正すものだ。
お客様というものは、決めるまではあれこれ迷ってなかなか決めないが、いったん決めたら、すぐに品物が欲しいのだ。
問屋で新製品を持ってこいというのは、新製品ではなくて〝よく売れるもの〟を持ってこい、という意味なのだ。
お得意様の売上増大を計ることが、我社の売上増大を実現する。
流通業者を通すと、流通業者が長年の間に築き上げた販売チャンネル、つまりお得意様を、その日から直ちに利用できる。流通業者に出すマージンは、販売チャンネルの利用料なのであって、流通業者の販売手数料ではないのである。
自らの商品は自ら売らなければダメだ。
フォローというサービスは、いつの場合にも大きな盲点になっているのである。
クレーム自体の社員の責任は追及しないが、クレームを報告しない責任を追及するのである。
理屈と法律というドライな欧米と、気持や態度を重視する日本とでは全く違うのである。
クレームが発生したら、何をおいても社長が飛んで行って誤るべきである。それだけで半分は勘弁してもらえるのが日本の国である。「社長の誠意」を買われるからである。
クレームはすべての業務に最優先する。
クレームの具体的な方針
- クレーム自体の責任は問わない
- クレームに対する言い訳は厳禁
- クレーム処理に関する費用はいっさい無視
- 同じクレームを二度と起こさないための対策をとる
社員はお客様に対して責任を持たない人種。
自ら悪者になることこそ賢い会社のやること。
生きた金というのは、お客様の満足のために使われるものだ。
事業部制という考え方は、アメリカはいざ知らず日本においては誤った考え方なのである。事業部制をとった途端に新商品の開発が止まってしまったという悩みを、私は数多くの社長から聞かされている。・・・・・・将来を犠牲にして、現在の利益のみを追求するという害毒を流し続けていたのである。・・・・・・事業部制というものは、事業部の今日の利益が何よりも大切なものとなってしまって、会社の長期的な利益など誰も考えなくなってしまうもの。
内部の混乱をさけることによって、お客様との間に混乱を引き起こすからである。
お客様へのサービスというものは、もともと面倒くさく、能率が悪く、経費がかかるものなのだ。
お客様は我社の都合を考えて注文するのではなくて、自分の都合で注文するのだ。
セールスマンに商品知識は不要である。
次の機会というものは永久に来ないのである。というのは、お客様は過去のことはいっさい忘れて、いつも現在の商談だけしか考えないからである。
私は、長年の経験から、人材不足をいう社長は、ただ一人の例外もなく社長自身が自らやるべきことをやっていない、ということを知っているからである。
人材というものは教育しても得られず、本当の人材は会社を去ってゆく。会社には人材などいないし、求められないものだ。
お客様の要求を満たすためには、社内の事情などいっさい無視をするのである。
人材は社長の正しい姿勢によって、社内から自然に育ってくるもの。
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