小浜逸郎『日本の七大思想家』幻冬舎新書
現存在の本来的なあり方とはどういう状態か。
それは、この公開された共同空間の隠蔽的な性格から遠ざかって、死を、その本質である「現存在の最も自己的な、没交渉な、確実ではあるが不定な、追い越しえない可能性」として直視し、そこに立ち返ることである。
そのことによって現存在は先駆けて死というこの未来の可能性を現実に引き寄せることができる。そしてこの覚悟性(あらかじめ自分の避けられない運命に対して腹を固めるということであろう)によって、はじめて「良心の呼び声」が聞こえてくるという。
ここで言われる良心の呼び声とは、明らかに人間が真の倫理性に目覚めるということである。
したがって、ハイデガーは、倫理の立ち上がる場所を、日常的な人間交流のさなかに求めず、逆にひとり孤独に死と向き合う地点に求めていることになる。
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