一倉定『経営の思いがけないコツ』日本経営合理化協会出版局
私のコンサルティングは、環境整備(清潔・整頓・安全・衛生など)に始まる。これ以外に何もしないのに、業績が上がっていく。後はすべて、自然とうまくいく。
真のワンマン経営者は、会社の責任を一身に負う。自らの状況判断に基づいて目標設定を行い、お客様の要求をいかにして満たすかということだけを考えて、それを実現していくことを使命としている。
経営計画書を、必ず自らの手で書き上げることこそ、社長として絶対にやらなければならないことである。
多くの人々を立派に使う法こそ、リーダーシップである。リーダーシップの要諦は、「自ずからの意図を明らかにする」ことであり、それを最も効果的に発揮する法は、〝明文化〟である。これが、経営計画書の〝魔法〟の正体である。
「口頭による指令は忘れられ、文書による指令は守られる」-これが、私が経営計画書の作成を社長に強力に進言する理由である。
社長というものは、〝毛並み〟のよさを絶対に必要とする。毛並みというものは、氏素姓や教養だけではなく、行動半径の大きさ、そして立派な友、しかも異業種の友を多くもっていることが大切である。
特に社長には、社運を決める〝決定〟という大事がある。これは、重要なことであればあるほど、社内の人には相談できないものだ。
内部管理からは収益は生まれない。
私はトーハツの下請企業に勤めていた。そこでの体験が、わが〝一倉教〟の原点であり、・・・
事業とは市場活動である。
お客様を〝加入者〟とよんでいた電々公社では、真藤社長から「電々語だ」と叱られたのは有名な話である。
GMとともに
事業の経営は、お客様の要求を満たすことによってのみ可能なことを考える時に、お客様訪問を忘れるとは何とも不可思議な現象である。この大錯誤の原因は、どこにあったのか。それは、テーラーの〝科学的管理法〟やギルブレスの〝動作研究〟、メイヨーの〝ホーソン効果〟といわれる人間関係論などの内部管理論を、〝経営〟と思い違いしてしまったところにある。
外国人に対しては、日本の常識は通用しないのだ。
〝責任の範囲の明確化〟それ自体が、無責任社員をつくりだしてしまったのである。
マネジメントと称する観念論こそ、真剣勝負の事業経営に、常に大きなマイナスとなってくることを知ってもらいたいのである。
クレーム処理の方針には、絶対にはずせない四つの重要な点がある。
- すべての業務に最優先する
- 言訳は絶対不可
- 費用無視、復元最優先
- クレームの責任を追及せず、クレーム不報告の責任を厳重に追究する
「品質は工程で作りこまれる」と言ってみても、その品質とは設計品質のことであって、良品という意味ではない。
メーカーとしての正しい姿勢は、品質管理(作る側の論理)ではなくて、信頼性管理(使う側の論理)でなければならないのである。
社長が社内にいるのは、一週間のうち一日以内にすべきである-というのが、私の主張である。
訪問の具体的なやり方
- 会社に出社しない
- アポイントはとらない
- お客様には一人で会う
- 相手の要望のみを聞く
- 繰り返し訪問する
- 滞在時間はせいぜい十分以内
世界中、いかなる国でも、塵一つないところがある。それは軍隊である。
環境整備とは、規律、清潔、整頓、安全、衛生の五つの活動を行うこと
「決定」は個人で行うのが正しいのである。
「固定費は商品に割掛けて補償されなければならない」という阿呆の論理
年計、統計学では、ちゃんと正式のメンバーなのである。〝Year to Date〟と呼ばれているのがこれである。
経営三種の神器・・・お客様訪問、環境整備、経営計画書
「企業があげられる最大限利益は、企業が必要とする最小限利益より少ない」というのが現実だからである。
目標と実績との差を読むこと
間違った理論というのは、マネジメントの基本原理の一つであるPlan-Do-Checkつまり、「実績を計画に近づける」という思想である。
経営計画書、一倉式では長期事業構想書をもっているからである。
利益計画には、大きく分けて二つの考え方がある。一つは、売上高、粗利益、人件費、経費などの実績をもとにして、利益を予測する方法。もう一つは、社長が自らの意志によって意欲的な、時にはムチャと思われる利益を計画する方法である。
この試算で注意しなければならないことは、一つの試算では、変えてみる数字は必ず一個所でなければならないということである。
資金運用は未来計算だからである。
資金繰りというものは、未来計算ではない。資金繰りは、資金、すなわち現金に関する時系列計算であって、資金の収支を計算するものである。いわば、資金の損益計算である。
これに対して、資金運用は期末における資金構造を計算するものである。資金構造だから、資金運用はバランスシートの勘定科目で行うものなのである。言いかえれば、資金運用は、期末において、バランスシートのどの勘定科目に、いくらの資金を配分するかという、資金構造を計画するものである。つまり、〝資金の断面計画〟なのである。
資金運用とは、バランスシートの左右の金額を同時に同額だけ変えることと見つけたり
支払手形が生まれたのは、日本が島国だからである。・・・逃げ場のないことが、手形なる妙ちきりんなものを生んだのである。
太平洋戦争では、ランチェスター戦略のために、日本軍は各所で痛めつけられたのである。
人間は、一つや二つの欠点をもっていたほうが、人間なのだ。だから、部下に指令をくだすときも、『これはお前の方が俺より上だ。ひとつ頼む』とか、『お前の仕事ぶりには舌をまく。その伝でこれをやってくれ』と部下を立てるのだ(私はこの手をよく使う)。
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