大塚和義『アイヌ 海浜と水辺の民』新宿書房
「アイヌ」とは人間をさす言葉であるが、これと対峙する存在が「カムイ」、つまり神である。アイヌにとって、神といかに対等に共生していくかが、現実の世界である「アイヌモシリ」での基本戦略だ。
アイヌは日常的に神の存在を意識し、それとの交信を怠らない。すなわち、人間にとって絶大なる利益を与え、人間の命運までも左右する力をもつ神と真剣に接し、とぎれることのない儀式によって厚く処遇した。そして、その見返りとして神からのプレゼントを期待したのである。
アイヌとは、アイヌ語で人間を意味する言葉である。アイヌの人たちは、自分たちが生活の場として幾世代にもわたって居住し、歴史を刻んてきた父祖からの土地を「アイヌモシリ」とよんできた。アイヌモシリは、「人間の大地」、あるいは「人間の世界」と訳すことができる。
自己に主体的なアイデンティティが存在すれば、その「民族」として生きることが認められるべきである。
「大和民族」なるものも、大陸や島嶼(とうしょ)づたいにいくたびも渡来した人たちとの混血であることは明白である。
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