立花隆『日本共産党の研究[二]』講談社文庫
マルクス主義の理論は一見おどろおどろしいようだが、実は単純な二分法概念の組合せの上に構築されているからきわめて図式的である。したがって、頭が単純な人にはきわめて入りやすい。
マルクス主義が二分法概念から逃れられないのは、その基礎に、弁証法を置いているからである。
二分法概念はマルクス主義の強さであると同時に弱さである。その弱さは、中間項をうまくハンドリングできないことにあらわれる。
何よりもまず天皇制を倒せというのが三十二年テーゼのエッセンスである。
党員たちが自分の頭で考え、自分のことばをしゃべる政治集団にならないかぎり、共産党はいつまた昨日までとはまったくちがうことを、明日から主張しはじめるかもしれない政治集団であるというのが、歴史の教えるところである。
トロツキーにしろ、ブハーリンにしろ、あるいは死後のスターリンにしろ、いったん権力の座からころげ落ちると、過去にさかのぼってその男がいかにひどい男であったかということが徹底的にバクロ・キャンペーンされる。
共産党に民主集中制という組織原則が・・・
責任はまず主体性においてあるというのが責任論のイロハである。
「マルクス主義は闘争形態を選ばない」としたレーニンのように、基本的にはすべてが許されていると考える者がある。
「八項規律十大注意」として有名な厳重な規律を紅軍に守らせた毛沢東のような指導者もいる。
戦後の共産党の二段階革命論は、戦前の天皇制に代えて、アメリカ帝国主義を持ってくる。
ソビエト同盟は、世界のプロレタリアートの祖国だからである。
ロシア民族の英雄崇拝的映画、エイゼンシュテインの「イワン雷帝」
野坂参三がアメリカ経由の地下ルートで日本に送り込んだ「日本の共産主義者へのてがみ」(1936・2・10)は、日本の人民戦線史上、最も有名な歴史的文書であるが、・・・
政治の論理は、詮ずるところ、「お前の敵は殺せ」というにあると埴谷雄高は喝破したが、・・・
マルクス主義とは単なる経済学上の理論ではなく、理論と実践を不可分のものとするところに、その思想としての真骨頂があり、・・・
マルクス主義は正しいという信念と、実践運動からは手を引くという決意は、マルクス主義の論理においては両立しがたいものである。
福本イズムを契機として、労農派が分離してからは、共産党系インテリの観念主義的傾向はますます深まった。
同じ宗教の中でも、自力救済をいっさい否定する点において、親鸞の教えはマルクス主義とは大局的な立場に立つ。
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