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2016年11月14日 (月)

田中弘『GDPも純利益も悪徳で栄える―「賢者の会計学」と「愚者の会計学」』税務経理協会

フランスの会計は統制経済のための会計です。ドイツの会計はコンツェルンの会計なので、管理会計です。私たちが普段やっている「投資家のための会計」に向いた会計基準はアメリカと日本とイギリスでしか作れないのです。他の国は作った経験が少ないのです。

イギリスがEUから離脱して一番悩ましいのは、たぶん、フランスです。これまではドイツの独断専横をイギリスが押さえてきた経緯がありますが、イギリスが離脱するとなると、EU二七か国は、軍事的にも経済的にも政治的にもドイツの支配下に置かれるようなものです。

フランスは農業国ですから、資本市場を前提にした会計基準は作れないでしょう。

特に最近ではROE経営という経営手法もあります。ボトムラインで経営をやるというものです。ボトムラインで経営をやると、何が起きるか。それは「上からだんだんダメになる」ことです。つまり、最初に下を決めてしまうと、あとはそれに合わせて上を調整するしかないのです。

GDPの計算でも有価証券の売却益はGDPに入れません。企業の付加価値の計算でも株の売却益は除外します。

イギリス、アイルランド、イタリアの国々ではGDPに売春、麻薬といった違法取引も含めるようにしています。イタリアは密輸もGDPに含めてしまっています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンが「優先順位」としてつけた、「顧客」「仕入れ先」「従業員」「社会」「株主」という順番は、奇しくも、損益計算書の書き順とまったく同じ順番なのである。

株式価値=資本合計(OBたちを含めた過去の頑張り)+現役たちの今期の頑張り+中長期の頑張り(経営者の頑張り)

ROEは「率」であって「量」を語らない。

企業会計原則では、「区別」を「会計処理」に使い、「区分」を「表示」に使っている。

誇りを持って「これが会計のルールです」と言えるものが、残念ながら会計には非常に少ない。誇りを持って言えるとすれば、例えば、「一致の原則」とか「貸借対照表=連結環」論、「投下資本の回収余剰としての利益の計算」、「期間損益計算の原則」、「実現主義」、「貸借平均の原理」などであろうが、いずれも、国際会計基準の世界では否定されようとしている。

ルールというものは、法律にしろ会計基準にしろ、新しいことを始めるためか、これまでのことを変える(やめさせる)ために設定される。アメリカの時価会計基準は、中小の金融機関(S&L)に原価会計を悪用した経理を「やめあせるために」作った基準であるし、同じアメリカの減損会計基準は、経営が悪化したアメリカ企業がV字回復を演出するために減損処理を悪用したことから、そうした経理を「やめさせるために」設定されたものである。

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