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2019年12月 8日 (日)

苅部直『丸山眞男ーリベラリストの肖像』岩波新書

いわく西洋近代の愚直な賛美者、いわく大衆から遊離した啓蒙家、いわく国民国家の幻像にしがみつく隠れナショナリスト。右側からは冷戦時代に共産勢力に迎合した学者先生と叩かれ、左側からはラディカルにつき進もうとしない保守性を糾弾される。

宣長は、儒学、とりわけ朱子学の倫理を、理窟によって人の「真心」を束縛しようとする、中国風の「漢意」の所産と見なし、それは支配者が、高邁な理想を掲げ人々を手なずけるためにこしられたものにすぎないと批判した。

絶対の正義は存在しない。しかし人は執念を持つものだ、それによって動くのだ、それがどんなにイリュージョンであっても、イリュージョンの方が現実よりも強い。

「最も意地の悪い」しうちを加えてきたのは、陸軍兵志願者訓練所で徹底した「皇民化」教育をうけて入営した、朝鮮人の一等兵だったと丸山は回想している。

カイヤットの映画の医師のように、たとえ自分では良心をもって接していると思っていても、植民地支配をうけている「現地民」からすれば、しょせん、憎むべき支配者の一員にすぎない。

私はあなたのいうことに賛成派しないが、あなたがそれをいう権利は死んでも擁護しよう(ヴォルテール)。

真の政治理論は必ず性悪説をとる。

宗教信仰までもが、国家や政治党派、あるいは営利団体による操作の対象となっている時代が、丸山の言う「現代」にほかならない。

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